ラノベ史探訪(5)-ラノベ専門誌の始まりを見てみよう【「ザ・スニーカー」編】

前回の「ラノベ史探訪(4)-ラノベ専門誌の始まりを見てみよう【「ドラゴンマガジン」編】」に続き、今回は【「ザ・スニーカー」編】になります。

【「ザ・スニーカー」(角川書店)】


(「ザ・スニーカー」’93 Spring(創刊号)の表紙)

[基本データ]
・1993年3月5日創刊(当初は季刊雑誌で後に隔月刊化)
・部数=150,000

青春ノベル、スニーカー文庫の筆者を中心にしたファンタジーノベル誌。イラストを多く使いファンタジー世界を効果的に脹らませる。
(『雑誌新聞総かたろぐ 1993年版』1993年6月)

「ザ・スニーカー」の創刊は1993年、「角川文庫・青帯」がスニーカー文庫と命名されてから4年後のことでした。『雑誌新聞総かたろぐ』の引用からも分かる通り、当初はファンタジー作品の掲載に特化した「ファンタジーノベル誌」としての性格が強かったようです。下の目次を見るだけでも、水野良氏の「ロードス島戦記外伝 帰らずの森の妖精」を筆頭に、火浦功氏の「未来放浪ガルディーン外伝 ベリアルの日曜日」、あかほりさとる氏の「NG騎士ラムネ&40外伝 ダ・サイダー伝説 ギザギザハー塔のチンコン歌!」などの読切作品を掲載しており、現在の学園モノ全盛の時代では考えられないほどのファンタジー作品率です。これは1980年代後半からのファンタジーブームの流れを受けた、ファンタジー作品全盛時代ならではと言えるでしょう。


(「ザ・スニーカー」’93 Spring(創刊号)の目次)

また「ザ・スニーカー」では、作品紹介と絡めた作家特集を創刊号から大々的に組んでいる点が特徴的と言えます。例えば創刊号では「未来放浪ガルディーン大特集!!ぐわんばれ、火浦功!!」、続く第2号では「田中芳樹大特集 アルスラーン戦記はこうして作られた!!」、第3号では「水野良大特集 さよなら、ロードス島戦記」が組まれています。


(「ザ・スニーカー」’93 Summer の表紙)


(「ザ・スニーカー」’93 Autumn の表紙)

ちなみに「ザ・スニーカー」は単独創刊というわけではなく、同じ角川書店の文芸誌「野性時代」の増刊号という形態をとっていました。実は「ザ・スニーカー」創刊前、「野生時代」では菊地秀行氏の「魔界医師メフィスト」や笠井潔氏の「ヴァンバイヤー戦争」などの連載をはじめ、水野良氏の「ロードス島戦記3」連載や「ロードス島戦記」関連の特集が組まれるなど、ライトノベル専門誌としての側面を少なからず持っていたのです。それが1993年の「野性時代」リニューアルに伴い、ファンタジー作品を分離する形で創刊されたのが「ザ・スニーカー」でした。このように考えると、前述した作品紹介と絡めた作家特集の他、「ドラゴンマガジン」に比べると文芸誌に近い雰囲気の装丁などは「野性時代」の名残なのかもしれません(参考:SSMGの人の日記「ザ・スニーカー歴代表紙+主な特集リスト」)。表紙で「オール読切」を強調している点も含め、創刊当時の「ザ・スニーカー」は「獅子王」と同じく、外伝などを含めた作品掲載の場としての性格が強かったと思われます。


(「野性時代」1989年12月号 ロードス島戦記3の連載と特集)


(「野性時代」1992年1月号掲載の「アニメ世界の中のリアリティ」)


(「野性時代」1993年2月号掲載の「ザ・スニーカー」創刊告知)

*追記*
昨年休刊してしまった「ザ・スニーカー」ですが、現在、角川スニーカー文庫の3ヶ月連続新作刊行を記念した無料小冊子「ザ・スニーカーEX(エクストラ)」が配布されています。興味のある方はお近くの書店などで探してみてはいかがでしょうか。

以上、【「ザ・スニーカー」編】でした。
次回は【「電撃hp」編】を予定していますので、引き続きよろしくお願い致します。

【文責:山中】

2 Responses to ラノベ史探訪(5)-ラノベ専門誌の始まりを見てみよう【「ザ・スニーカー」編】

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