【イベント】5/31★ライトノベルと図書館の意外なカンケイ★ 大橋崇行さん×小曽川真貴さん×山中智省さん×嵯峨景子さんトークイベント:『司書のお仕事』(勉誠出版)刊行記念

2018/05/18

5月31日(木)の夜、八重洲ブックセンター本店にて『司書のお仕事』刊行記念トークイベント「ライトノベルと図書館の意外なカンケイ」を開催することが決定しました。平日開催となりますが、ご興味のある方はぜひご参加ください!!

【日時】2018年5月31日 (木) 19:30~20:40(開場19:00)
【会場】八重洲ブックセンター本店 8F ギャラリー
【参加費】入場料:500円(税込)※当日会場入口にてお支払いください。
【募集人員】50名(お申し込み先着順)※定員になり次第、締め切りとなります。

お申し込み方法の詳細はコチラ

【内容】
ライトノベル研究者・作家らが、ライトノベルの変遷について触れながら、図書館とライトノベルの「カンケイ★」などを紹介。「なぜ図書館にライトノベルが収蔵されにくいのか」などの疑問にも現役司書さんがお答えします。

【登壇者】
登壇者は、大橋崇行(作家・東海学園大学准教授)、小曽川真貴(犬山市立図書館司書)、山中智省(目白大学専任講師)、嵯峨景子(明治学院大学非常勤講師ほか)の4名となります。

【来場特典】
特製イラストブロマイド2枚をプレゼント

どうぞよろしくお願い致します!!

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ライトノベル史入門  『ドラゴンマガジン』創刊物語―狼煙を上げた先駆者たち ライトノベル史入門  『ドラゴンマガジン』創刊物語―狼煙を上げた先駆者たち
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【文責:山中】

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『ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語』の紹介記事が「産経ニュース」に掲載されました

2018/02/21

2018年1月31日(水)に勉誠出版より刊行された山中智省(著)あらいずみるい(イラスト)『ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語―狼煙を上げた先駆者たち』の紹介記事が、産経新聞「産経ニュース」に掲載されました。

「ラノベ」はなぜ生まれたのか 興隆期の雑誌を研究(2018年2月19日17時)

こちらの記事では、著者である山中が本書執筆の経緯や研究の成果などについて、インタビューに答えております。ご興味のある方はぜひご覧ください。

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【文責:山中】


【新刊告知】山中智省(著)あらいずみるい(イラスト)『ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語―狼煙を上げた先駆者たち』勉誠出版

2018/01/20

本日1月20日に発売された『ドラゴンマガジン』(富士見書房)2018年3月号が今、俄かに注目を集めています。

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この要因としてはやはり、歴史にその名を刻むライトノベルの〝金字塔〟、神坂一(著)あらいずみるい(イラスト)『スレイヤーズ』シリーズの本編が久しぶりに再開されたことが大きいでしょう。単行本第15巻『デモン・スレイヤーズ!』(富士見ファンタジア文庫、2000年5月)以降、本編の続編を待ち望んでいたファンにとっては大変喜ばしいニュースでしたし、『ドラゴンマガジン』発売日当日の朝、真っ先に書店へ向かったという方、購入後はいの一番に読んだという方も、決して少なくないはずです。それほどまでに『スレイヤーズ』シリーズの本編再開は、多くの人々が注目するビックニュースだったわけですね。

<関連ニュース>

小説「スレイヤーズ」本編が再始動 2000年刊行の最終巻から続編
(KAI-YOU.net)

「スレイヤーズ」新作制作決定、なんとデモン・スレイヤーズ!終了後が舞台の続編に( Livedoor NEWS)

そして、いま一つ忘れてはならないのは、この2018年3月号をもって『ドラゴンマガジン』そのものが、創刊30周年を迎えたということです。1988年1月の創刊以来、数々の作家・作品を輩出しながら業界をリードしつつ、いわゆるライトノベル雑誌の草分け的存在と見なされてきた『ドラゴンマガジン』――。本号はまさに、その記念号として刊行されることとなりました。

さらに、付録「ドラゴンマガジン30thクロニクル」(『スレイヤーズ』新作もこちらに先行掲載)では、『ドラゴンマガジン』の創刊から現在に至るまでの歴史を年表形式で紹介しており、これまでの軌跡が辿れるようになっています。ですから、たとえ若い読者の方々であっても、『ドラゴンマガジン』とはいかなる雑誌で、どのような歴史を歩んできたのかを、あらためて知ることができる機会が生まれているわけですね。

<関連ニュース>

「ドラゴンマガジン」30周年記念号が1月20日発売! 皆さまに感謝の気持ちを込めて、スペシャルな目玉企画盛りだくさんでお届け致します!(PRTIMES)

ファンタジア文庫&ドラゴンマガジン30周年サイト(富士見書房)

ちなみにAKIHABARAゲーマーズ本店では現在、『ドラゴンマガジン』や富士見ファンタジア文庫の歴史に関する展示を実施中とのことです。私はまだ未見なのですが、おそらく、ある人は懐かしさとともに、またある人は、その歴史の長さと功績の大きさに対する驚きとともに、展示をご覧になっているのではないでしょうか。

さて、こうした状況のなか、『ドラゴンマガジン』創刊当時を中心に同誌やライトノベルの歴史に迫る研究書、山中智省(著)あらいずみるい(イラスト)『ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語―狼煙を上げた先駆者たち』(勉誠出版)が間もなく刊行されます。

今回の『ドラゴンマガジン』をめぐる様々な盛り上がりのなかで、同誌の歴史にあらためて興味を持ったという方、あるいは、同時代を経験したかつての読者だったという方には、ぜひ先の「ドラゴンマガジン30thクロニクル」と合わせて本書をお読み頂けましたら幸いです。刊行前のため詳細はまだ伏せますが、きっと本書を通じて、これまで知らなかった『ドラゴンマガジン』の一面を再発見できるのではないかと思いますので。

そして、本書には『ドラゴンマガジン』創刊に携わった方々の長文インタビューが複数収録されており、創刊の経緯はもちろん、当時の興味深い裏話も多数含まれています。著者である私も思わず「え!?」と驚かずにはいられなかった、あんなことやこんなことが、当事者の方々から語られているのも見所の一つです(笑)

【これが気になる!!という方にもお薦め】

・そもそも、なぜ『ドラゴンマガジン』は創刊に至ったのか?
・創刊号の表紙はなぜ、コスプレをしたアイドル(浅香唯)だったのか?
・『ドラゴンマガジン』に込められた編集者、作家、読者の想いとは何か?
・『ドラゴンマガジン』に作家が作品を掲載する際、何を意識していたのか? etc.

ライトノベル史入門  『ドラゴンマガジン』創刊物語―狼煙を上げた先駆者たち ライトノベル史入門  『ドラゴンマガジン』創刊物語―狼煙を上げた先駆者たち
山中智省 あらいずみるい勉誠出版 2018-01-31
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1980年代後半~90年代前半を中心に、現在「ライトノベル」と呼ばれている若年層向けエンターテインメント小説が誕生していく過程を、ライトノベル史に名を残す雑誌『ドラゴンマガジン』とその周辺状況に着目しつつ、著者が収集した多数の資料と同時代を経験した人物のインタビューから描き出す。(出版社HPより)

*試し読みはコチラ

【目次】

はじめに 

第1章 『ドラゴンマガジン』創刊前後の状況
Ⅰ 〈ライトノベル雑誌〉への注目
Ⅱ 創刊から躍進までの軌跡
Ⅲ 雑誌・文庫レーベル・新人賞の関係性
Ⅳ 創刊号にみるビジュアル重視の姿勢

第2章 創刊を手がけた編集者たち
Ⅰ 『ドラゴンマガジン』創刊責任者インタビュー 小川洋
Ⅱ 表紙・グラビア・取材記事担当インタビュー 竹中清
コラム① 誌上に現れた二つのメディアミックス

第3章 創刊号の誌面を飾った作家たち
Ⅰ 小説家インタビュー 竹河聖
Ⅱ イラストレーターインタビュー あらいずみるい
Ⅲ マンガ家インタビュー 見田竜介
コラム② 作家の共演が生み出した「イマジネーションの世界」

第4章 『ドラゴンマガジン』が育んできたもの
Ⅰ 読者投稿ページ「ガメル連邦」担当インタビュー 加藤一
Ⅱ 小説家インタビュー 新城カズマ
Ⅲ 小説家インタビュー 伊藤ヒロ
コラム③ 読者・作家・編集者が交差する場

第5章 〝ビジュアル・エンターテインメント〟の誕生と展開
Ⅰ 「メディアミックス世代」と呼ばれた読者たち
Ⅱ ビジュアル重視の小説雑誌と読者―『獅子王』『ドラゴンマガジン』を例に
Ⅲ 『ドラゴンマガジン』が生んだ〝ビジュアル・エンターテインメント〟

おわりに―そして「ライトノベル」へ

あとがき
参考文献一覧
過去の作品を知りたい・読みたい・入手したい人のための資料探索ガイド
『ドラゴンマガジン』基本情報一覧(1988~1995年)

すでに見本出来とのことですので、早ければ来週あたりから順次、書店に並び始めるかと思われます。こちらにつきましては判明次第、あらためて告知致します。

それでは、どうぞよろしくお願い致します!!

【文責:山中】


第3回ライトノベル・フロントライン大賞発表

2017/12/30

『ライトノベル・フロントライン』(青弓社)の休刊に伴い、第3回の選考結果は青弓社HPにて発表されました。本ブログでも、あらためてご報告させて頂きます。

〔参考〕第3回ライトノベル・フロントライン大賞、発表!(青弓社HP)

「ライトノベル・フロントライン大賞」は、人気シリーズの新作やメディアミックス作品といった「売れ筋」が名を連ねるランキングの存在を踏まえ、それらにはなかなか現れにくい新人作家のデビュー作に注目する。商業成績によらず、作品としてのおもしろさ(、完成度の高さ)をしっかり評価することを第一に考え、あまたの作品のなかに埋もれがちなライトノベルの良作を再発見していくことが、本大賞の目的である。これをきっかけに一つでも多くの作品が読者の手に届き、ライトノベルを楽しむ機会が増えてくれたらと強く願っている。第3回の選考対象となった作品は、2016年1月1日から同年12月31日の間に刊行された新人作家のデビュー作で、選考作業はライトノベル研究会の会員がおこなった。

ライトノベル研究会が総力を挙げて選考した新人作家のデビュー作のうち、最終選考に残ったのは次の6作品。

・藤宮カズキ『いつかの空、君との魔法』(スニーカー文庫)
・昼熊『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』(スニーカー文庫)
・霧山よん『姫騎士はオークにつかまりました。』(ファンタジア文庫)
・駱駝『俺を好きなのはお前だけかよ』(電撃文庫)
・今慈ムジナ『ふあゆ』(ガガガ文庫)
・大桑康博『呪術法律家ミカヤ』(GA文庫)

この6作品は、選考対象作品の数々を会員が下読みし、各人の推薦作品を『ライトノベル・フロントライン』の編著者である大橋崇行と山中智省がさらに絞り込み、大賞候補として選出したものである。そして最終選考委員会による協議を重ね、大賞と特別賞の受賞作品を選考。第3回となる今回は、以下のような結果になった。

<大賞>

藤宮カズキ『いつかの空、君との魔法』(スニーカー文庫)
今慈ムジナ『ふあゆ』(ガガガ文庫)

 

いつかの空、君との魔法 (角川スニーカー文庫) いつかの空、君との魔法 (角川スニーカー文庫)
藤宮カズキ フライKADOKAWA/角川書店 2016-08-31
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その空の色を、まだ誰も知らない。酸素と同じように、人々の生命活動に精霊が不可欠な世界。近代化された都市・アリステルに生きる人々は、常に上空を覆うダスト層雲によって空の青さを知らずにいた。ダスト層雲を払い、精霊を呼び寄せることが出来るのは、箒に乗って魔法を使う儀式<グラオベーゼン>の担い手である<ヘクセ>と呼ばれる10代の少年少女だけ。箒さばきと造形魔法が天才的なものの高所恐怖症という三流ヘクセの主人公カリムと、彼の幼馴染みで当代随一のヘクセ揺月は、過去の事故以来お互いのことを気にしながらも疎遠になっていた。そんな中、アリステルの街を危機に陥れる規模の精霊不足が起こり、カリムと揺月は二人でグラオベーゼンを行うことに。全く噛み合わない二人は、町の人々を救うため「青空」を招くことが出来るのか――。稀代の新鋭が描く、空を駆ける青春ファンタジー。(作品紹介より)

ふあゆ (ガガガ文庫) ふあゆ (ガガガ文庫)
今慈 ムジナ小学館 2016-05-18
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心因性相貌誤認症―他者とは異なる認識の中を生きる少年・龍胆ツクシ。ひょんなことから、彼は連続猟奇殺人事件の現場を目撃してしまう。そこに佇んでいた犯人は、ハシビロコウ頭の人物だった。しかし、彼の証言を信じる者は誰もいない。自身の役立たずぶりを改めて実感しながらも、ツクシは「自分にできることはなにか」を考え始める。そんなとき、少女のカタチをした怪異が目の前に現れ、彼の世界は徐々に変化していくのだが…。自我と認識の問題を巡る、最新の現代怪異譚。第10回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作。(作品紹介より)

<特別賞>

昼熊『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』(スニーカー文庫)

 

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う (角川スニーカー文庫) 自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う (角川スニーカー文庫)
昼熊 加藤いつわKADOKAWA/角川書店 2016-07-30
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交通事故に巻き込まれた「俺」は、目が覚めると見知らぬ湖の前に立っていた。体は動かず、声も出せず、訳もわからぬ状況に混乱し叫び出すと予想だにしない言葉が――!?「あたりがでたら もういっぽん」ど、どうやら俺は自動販売機になってしまったらしい……! 選択出来る行動は自動販売機の機能”のみ”。自力で動くこともできず、会話もまともにできない状況で異世界のダンジョンを生き抜く事は出来るのか!?人気小説投稿サイト「小説家になろう」で話題沸騰!ダンジョンの奥深くで出会った少女と自販機を描く、新感覚迷宮ファンタジー開幕!!!(作品紹介より)

選考過程につきましては、青弓社HPをご覧ください。

【文責:山中】


何が現地語なのか?(東南アジアのライトノベル)

2017/12/24

ということで、10月から11月にかけては、インドネシアとマレーシアの本屋巡りをしながら「現地語のライトノベル」探しをさせていただいたわけですが、タイなどに比べるとライトノベル自体の存在感が薄いことを実感しました。マレーシアだと英語や中国語翻訳で入っているけどインドネシアではそれも薄い。マレーシア語やインドネシア語翻訳では、ほとんど無いに等しい(マレーシア語の『古典部』シリーズの翻訳のみ発見。)

ここで白状しなければならいのですが、私はインドネシアやマレーシアの言語事情を軽く考えすぎていました。マレーシアの「現地語」はマレーシア語であり、インドネシアのそれはインドネシア語である(そしてインドネシア語とマレーシア語とほとんど一緒の言語である)程度にしか考えていなかったのです。ところがマレーシアでのマルチリンガルな言語事情を目の当たりにして、何が「現地語」なのかは、よくよく考えておく必要があったと反省しました。

今回の訪問国に限らず多くのアジア・アフリカの国々に共通する話なのですが、植民地支配を受けた地域はマルチリンガルな社会であり、言語はおおよそ3層構造になっているとされます。まず、家庭内で使われている母語の層があります。アジアやアフリカはこれが結構細かく分かれていて、部族や氏族ごとに違う母語が使われている場合が多い。インドネシアでは500以上の言語が話されているといいますし、インドでは約1000の言語が今でも話されているとされます。
これに対して、地域共通語(リンガ・フランカ)というのがあって、社会生活や学校教育で用いられます。フィリピン語(フィリピーナ)もタガログ語という共通語を公用語として採用したものです。インドネシアの場合はバハサと呼ばれる共通語があって、インドネシア語と呼ばれる公用語は、このバハサを指します。

地域共通語はその国の有力地域で使われている言葉が使われることが多いのですが(フィリピンのタガログ語はその一例)、例外もあります。例えば、インドネシアで用いられる言語で母語話者が最も多いのはジャワ語であって(7500万人)、バハサ(もしくはその元となったマレー語系)を母語としている人達(1700〜3000万人)よりもはるかに多い。つまり、ジャワ島での「現地語」とはインドネシア語ではなくてジャワ語という方が正しいのかもしれません。加えていうなら、ジャワ語は古い歴史を持ち、古典文芸も書かれているという、かなり格調の高い言語だし、ジャワ語を話すジャワ人はインドネシアという国の中枢を握っているマジョリティーです。

<インドネシアの言語マップ>

この他に旧宗主国の言語があり、高等教育はこの言葉が使われることが多いし、役所の手続きなどにも使われます。マレーシアはイギリス領でしたから英語がこれに該当し、インドネシはオランダ領だったのでオランダ語がこれに該当します。

このように多くの地域では人々の言語環境は本質的にマルチリンガルです。日本のようにかなり早い時期に言語が統一され、西欧列強による植民地化を免れ、明治期のインテリが頑張って翻訳したおかげで西欧語を使わずに高等教育することが可能になっているという、モノリンガルな国の中にいると見えにくい話です。しかし、アジアを旅していれば、部族語と地域共通語を3つ以上操る人は普通に見ますし、インテリともなると日本人以上に達者な西欧語を喋っているのは普通の風景です。

このマルチリンガルな状態を「書き言葉」の観点から考えてみましょう。ライトノベルは10代のための娯楽小説なので、どうしても「読む」という行為が必要となるからです。まず、多くの部族語や氏族語は書き言葉としては未熟です。話者が少ない場合、正書法が確立していないことも多く、出版物も極めて限られるというか、無いに等しい場合がほとんどです。つまり、多くの母語は書物と無縁の言葉なのです。

地域共通語ともなると、ある程度正書法も確立されて、出版物もそこそこ出て来ますけれど、これは各国の事情に強く依存します。私が知っている東チモールはやや極端な例ですが、2002年独立のこの国では共通語(公用語)のテトゥン語の正書法が未だに定まっていません。声に出して読み上げれば誰でも理解できるのですが、綴りがまちまちなままなのです。こんな状態ですから、出版物も極めて限られたままです。つまり書き言葉としての共通語というのは、政府などが時間をかけて教育などを通じて作り出していくものであり、これは各国の事情に大きく依存するのです。

旧宗主国言語については独立後も高等教育などで残り続けるものの、やがて地域共通語が力をつけてくると、それに譲るようになります。また最近では、国際共通語としての英語が旧宗主国言語にとって代わる例も多く見受けられます。

インドネシアの場合は、独立時の理念に従い敢えてマジョリティーのジャワ語を公用語とはせずに、バハサ(共通語)を採用してその教育と普及にかなり力を入れました。とはいうものの、ジャワ語などの民族語教育も行われていますし、どんな庶民でも母語とバハサのバイリンガルです。旧宗主国のオランダ語は影を潜めたものの大学によっては英語で教育が行われているといいますから、インテリは英語を加えた3言語話者が当たり前ということになります。これに加えて、マレーシアほどではないけれども中国系国民の存在があり、中国語の書籍も本屋には結構あります。

マレーシアの場合は、マレー系(マレーシア語)が65%、中華系(北京語、福建語、広東語、、、)25%、インド系(タミル語他)8%という人種・母語構成です。マレーシアもまた多くの言語が母語として話されていたのですが、それらは消滅しつつあるるのだそうです。過半数の人はマレーシア語が母語ではあるものの、人口の1/4を占める中国語話者がいるので、母語以外にマレーシア語や中国語を話せる人はかなり多いし、そこに旧宗主国言語である英語が大きな存在感を持っていて、多くの人が英語を話すことができます。要するにマレーシアは、相当なマルチリンガルな社会です。中国語は話し言葉こそバラバラですが書き言葉は統一されていますので相当な存在感があります。この結果としてマレーシア語と英語と中国語という3つの言語が本屋の中では同等の勢力を持っていると思って良い。

<マレーシアの民族構成>

(インドネシア語(バハサ)はマレー語が元になっているのでマレーシア語とインドネシア語はほとんど同じ言語です。ただ、政治的に両者を同じ言語として扱う動きはありませんし、出版も別々に行われています。)

モノリンガルな国から来た人間として、ついついインドネシア語やマレーシア語のライトノベルを探したのですが、マルチリンガルな環境というものをもう少し考慮してから調査にあたるべきだったと猛省しています。例えば、私がジャカルタの本屋さんでみていた「インドネシア語の本」ですが、ひょっとしたらジャワ語の本もあったのかもしれません。ジャワ語の出版物はかなり限られているらしいので、その可能性は低そうなのですが、それでもそこは意識しておくべきでした。

さて、こうした言語事情を前提にして考えるべきなのは、「ライトノベル出版が成立するほどに、十分な読書集団が形成されているのか?」、そして「その読書集団はその言葉で娯楽小説を読みたいと思うほどに言語習得できているのか?」という問題です。

前述したように、多くの言葉は話者自体が多くありませんし、書き言葉としての成熟度が問題になりますが逆にいうと、その条件を満たす言葉が複数になることはあり得るのです。マレーシアの場合は、マレーシア語、中国語がこれに該当し、加えて英語教育がかなりしっかりと行われた結果、英語読者も結構多い。つまり、マレーシアの「現地語」とはマレーシア語・中国語・英語であると考えておくべきなのです。インドネシアであれば、バハサとジャワ語がこれに該当し、他にも候補になる言語(スンダ語など)はあるのかもしれません。

そして十代の読者層にとっての「母語でない言語で読む小説」とはどんなものなのか、想像力を巡らしておくことは必要になるるでしょう。一言でマルチリンガルといっても、皆が皆、全ての言語を母語並みに操れるというわけでは無いのです。ことに書き言葉は習得にそれなりの労力を要しますので、マルチリンガルだからといって誰もがスラスラと多種にわたる言語の本を読んでいるわけでも無いらしい。私の知り合いのインドネシア人には、英語での会話は達者だけれども、英語メールの返事を絶対に書いてくれないという人がいました。話し言葉を操る能力と、書き言葉を操る能力は別なのです。

ジャワ語を母語とするインドネシアの青少年にとって、バハサの娯楽小説というのは、どの程度とっつきやすいものなのか。彼らにとってバハサとは、学校で使われ、テレビで流れる「少し改まった言葉」なのであり、友達同士でふざけあったりダラダラとお喋りする言語はジャワ語なのです。そうなると、様々な手口で書き手と読者の近さ演出し、親しみやすさを信条とするライトノベルにとって、バハサは最適な言語になるのでしょうか?

あるいは、英語を喋っているマレーシア人にとって英語のライトノベルは気楽に読める娯楽小説なのでしょうか?中国語も話せるマレー系住人は中国語の軽小説を気楽に読むことができるのか?その逆にマレーシア語も話せる中国系住人にとってマレーシア語の娯楽小説は気軽に読めるものなのか?

ライトノベルの出版が成立するためには、ある程度のお金を持っている(お小遣いをもらっている)10代の読者層が一定数以上存在しなくてはならない。そのように私は思っていたのですが、それ以前に「気軽に読める言葉で小説が出版されるなどの環境が整っているのか」という問題があるのです。当たり前といえば当たり前なのですが、モノリンガルな日本からは案外に見落としやすい点なので、長々と書いてしまいました。

(報告:太田)


【新刊告知】山中智省『ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語ー狼煙を上げた先駆者たち』勉誠出版(2018年1月刊行予定)

2017/12/06

私事で大変恐縮ではございますが、このたび勉誠出版より、単著『ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語ー狼煙を上げた先駆者たち』を刊行する運びとなりました。本日(12/5)情報が出ましたため、こちらのブログでも告知をさせて頂きます。

これまで私はライトノベル研究会をはじめ、日本近代文学会や日本出版学会などで研究発表の機会を頂き、創刊当時の『ドラゴンマガジン』(富士見書房)に関する報告を複数回行ってきました。ご存知の方はおそらく「ああ『ドラマガ』発表の人か~」とお思いかもしれませんが(笑)そして今回の単著はそれら報告の集大成でもあり、今後の研究に繋げていくための足掛かりでもあります。

[参考]ラノベ史探訪(4)―ラノベ専門誌の始まりを見てみよう【「ドラゴンマガジン」編】

今回の単著では、およそ5年ほどかけてコツコツ収集してきた多数の資料に加え、『ドラゴンマガジン』の創刊に関わった編集者、そして同誌の作家や読者の方々のご協力で実現したインタビューをもとに、『ドラゴンマガジン』創刊の経緯や周辺の同時代状況、そして現在の「ライトノベル」が誕生していく過程に迫っていきます。現時点での刊行予定は2018年1月となっており、皆様のお手元に届くまで今しばらく時間が掛かるかと思われますが、刊行の際はぜひお手に取って頂けましたら幸いに存じます。どうぞよろしくお願い致します。

≪目次≫

はじめに

第1章 『ドラゴンマガジン』創刊前後の状況
Ⅰ 〈ライトノベル雑誌〉への注目
Ⅱ 創刊から躍進までの軌跡
Ⅲ 雑誌・文庫レーベル・新人賞の関係性
Ⅳ 創刊号にみるビジュアル重視の姿勢

第2章 創刊を手がけた編集者たち
Ⅰ 『ドラゴンマガジン』創刊責任者インタビュー 小川洋
Ⅱ 表紙・グラビア・取材記事担当インタビュー 竹中清
コラム① 誌上に現れた二つのメディアミックス

第3章 創刊号の誌面を飾った作家たち
Ⅰ 小説家インタビュー 竹河聖
Ⅱ イラストレーターインタビュー あらいずみるい
Ⅲ マンガ家インタビュー 見田竜介
コラム② 作家の共演が生み出した「イマジネーションの世界」

第4章 『ドラゴンマガジン』が育んできたもの
Ⅰ  読者投稿ページ「ガメル連邦」担当インタビュー 加藤一
Ⅱ 小説家インタビュー 新城カズマ
Ⅲ 小説家インタビュー 伊藤ヒロ
コラム③ 読者・作家・編集者が交差する場

第5章 〝ビジュアル・エンターテインメント〟の誕生と展開
Ⅰ 「メディアミックス世代」と呼ばれた読者たち
Ⅱ ビジュアル重視の小説雑誌と読者―『獅子王』『ドラゴンマガジン』を例に
Ⅲ 『ドラゴンマガジン』が生んだ〝ビジュアル・エンターテインメント〟

おわりに―そして「ライトノベル」へ

あとがき
参考文献一覧
過去の作品を知りたい・読みたい・入手したい人のための資料探索ガイド
『ドラゴンマガジン』基本情報一覧(1988~1995年)

ライトノベル史入門  『ドラゴンマガジン』創刊物語: 狼煙を上げた先駆者たち ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語: 狼煙を上げた先駆者たち
山中智省

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なお、勤務校である目白大学の新宿図書館で現在開催中の企画展示「ライトノベル誕生の軌跡 ―ようこそ〝ビジュアル・エンターテインメント〟の世界へ」は、本書で紹介する事例の一部を含んだものとなっています。もしもご興味がありましたら、こちらもぜひご覧頂けましたら幸甚です。

【文責:山中】


【告知】企画展示「ライトノベル誕生の軌跡 ―ようこそ〝ビジュアル・エンターテインメント〟の世界へ」(12/1~12/26@目白大学新宿図書館)

2017/11/30

目白大学新宿キャンパスにて開講中の基礎教育科目「言語文化論」(担当:山中)との連動企画展示として、12月1日より「ライトノベル誕生の軌跡―ようこそ〝ビジュアル・エンターテインメント〟の世界へ」を、目白大学新宿キャンパスにて開催致します。

若年層向けのエンターテインメント小説として、日本はもちろん、海外でも知られるようになってきた「ライトノベル」。本展示では、そんなライトノベルが現在の姿を確立していった黎明期(特に1980年代後半~1990年代初頭)の状況にスポットを当て、当時勃興していた〝ビジュアル・エンターテインメント〟の様相から、 ライトノベル誕生の軌跡を辿っていきます。今ではなかなか目にすることができない貴重な資料も、多数展示いたします。

展示自体は小規模ではございますが、図書館スタッフの方々のご協力もあり、内容的には密度の濃いものになっておりますので、この機会にぜひご来館ください。

開催日:2017年12月1日(金)~12月26日(火)
時 間:月~金)21:00まで、土)17:00まで、日)休館
場 所:新宿図書館本館1F PC室前スペース

なお、学外(一般)の方でも見学可能です。来館の際は入館申込書にご記入頂く必要がございますので、受付にてお申し出下さい。

【文責:山中】


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