研究会メンバーの新刊情報 (『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』『「イタコ」の誕生 マスメディアと宗教文化』)

2017/03/06

ライトノベル研究会のメンバーである、嵯峨景子氏、大道晴香氏が、以下の書籍(単著)を刊行致しました。

■ 嵯峨景子『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』彩流社

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常に少女たちの「居場所」となり、「読者」と共に歩み続ける「Cobalt」/コバルト文庫。そんな「コバルト」を追うからこそ見える少女小説史!雑誌「Cobalt」の前身である『小説ジュニア』から、Web マガジンCobaltまでの時代を追い、各時代の読者と「少女小説」の移り変わりを徹底追跡。学校読書調査や雑誌の読者投稿なども引用し、時代のリアルな空気も読み取れます。80年代のコバルト読者からライトノベル世代の中高生まで、幅広い世代に楽しんでもらえる一冊です。
彩流社HP

関連イベント情報
『星へ行く船』全5巻完結記念!!新井素子先生×嵯峨景子先生(少女小説研究家)トークショー&サイン会決定!!
日時:2017年04月09日(日)15時から17時予定
会場:書泉ブックタワー9Fイベントスペース(秋葉原)

■大道晴香『「イタコ」の誕生 マスメディアと宗教文化』弘文堂

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盲目の巫女はブームを経て、アニメのシャーマンへ――イタコ文化はいかにして伝説となったか?

死者を呼び出し、生者へのメッセージを伝える盲目の巫女イタコは、1960年代のブームで一躍全国に知られる存在となった。その半世紀後、現実のイタコが高齢化した一方で、マンガやアニメでは少女イタコがシャーマンとして活躍している。東北の民俗宗教はいかにして新しい宗教文化になり得たのか? フィールドワークと資料の発掘、質問調査から丹念に追跡した貴重な論考。
弘文堂HP

コバルト文庫で辿る少女小説変遷史 コバルト文庫で辿る少女小説変遷史
嵯峨 景子彩流社 2016-12-28
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「イタコ」の誕生: マスメディアと宗教文化 「イタコ」の誕生: マスメディアと宗教文化
大道 晴香

弘文堂 2017-03-01
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【文責:山中】

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【イベント告知】黒史郎×一柳廣孝×山中智省×大橋崇行「ライトノベルは越境する!」(『ライトノベル・フロントライン3』(青弓社)刊行記念/2017年3月13日)

2017/02/25

『ライトノベル・フロントライン3』の刊行を記念し、下北沢の本屋B&Bにて以下のイベントを開催致します。

黒史郎×一柳廣孝×山中智省×大橋崇行「ライトノベルは越境する!」
『ライトノベル・フロントライン3』(青弓社)刊行記念

日時:2017年3月13日(月) 20:00~22:00
場所:本屋B&B (世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F)
イベントの詳細はコチラ

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【イベント情報】

中学生・高校生からアラフォーまでの読者を引き付け、一大ジャンルへと成長したライトノベル。ラノベは、マンガ・アニメへと越境して多メディア展開を果たすと同時に、各メディアから越境してくる作品も受け入れています。

一方で、刊行スピード・サイクルが早いうえに、いまや文庫だけでなくカルロ・ゼン『幼女戦記』などのように四六判などの判型で文芸書扱いでのレーベルも刊行されています。作品内容も非常に多岐にわたっていることもあり、ラノベがもつ懐の深さや魅力、ポテンシャルはいまだつかまえにくい状況です。

現在のラノベがもつ可能性はどこにあるのでしょうか?

本イベントでは怪異怪談を扱う作品を多く世に放ち、ラノベも執筆している黒史郎さんをゲストに迎えて、『ライトノベル・フロントライン3』で特集したメディアミックスの視点から、ラノベの「いま」と「これから」を議論します。作家と評論家・研究者とが真正面から語り合う貴重なイベントです。

みなさま、ぜひ足をお運びください。

【出演者プロフィール】

黒史郎(くろ・しろう)
作家。2007年、「夜は一緒に散歩しよ」で第1回「幽」怪談文学賞長編部門大賞を受賞。著書に『実話蒐録集』シリーズ(竹書房)、『乱歩奇譚』シリーズ(光文社)、『童提灯』(創土社)、『怪談撲滅委員会 死人に口無し』(KADOKAWA)など多数。

一柳廣孝(いちやなぎ・ひろたか)
横浜国立大学教員。専攻は日本近現代文学・文化史。著書に『〈こっくりさん〉と〈千里眼〉』(講談社)、『催眠術の日本近代』(青弓社)、『無意識という物語』(名古屋大学出版会)など。

山中智省(やまなか・ともみ)
目白大学教員。専攻は日本近代文学、サブカルチャー研究。著書に『ライトノベルよ、どこへいく』(青弓社)など。

大橋崇行(おおはし・たかゆき)
作家。東海学園大学教員。専攻は日本近代文学。小説に『レムリアの女神』(未知谷)、評論に『ライトノベルから見た少女/少年小説史』(笠間書院)など。

(告知ページより引用)

ライトノベル・フロントライン3: 特集 第2回ライトノベル・フロントライン大賞はこれだ! ライトノベル・フロントライン3: 特集 第2回ライトノベル・フロントライン大賞はこれだ!
大橋 崇行 山中 智省青弓社 2017-01-15
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【文責:山中】


シンポジウム『ライトノベル研究の現在』:日本近代文学会東海支部第58回研究会(2017年3月4日)

2017/02/20

来る3月4日(土)、名古屋大学東山キャンパスにて、シンポジウム『ライトノベル研究の現在』(日本近代文学会東海支部・JSPS科研費「現代日本におけるメディア横断型コンテンツに関する発信および受容についての研究」共催シンポジウム)が開催されます。詳細は以下の通りです。

【趣旨説明】

2000年代半ばに大塚英志や東浩紀、新城カズマといった批評家、作家たちによって語られていたライトノベルは、一柳廣孝・久米依子編『ライトノベル研究序説』(青弓社、2009)以降、学術研究の対象としてこれらの作品群をどのように扱うのかについて、具体的な方向性が模索されるようになった。その中で、ライトノベルは小説としての問題だけではなく、マンガやアニメーション、実写映画、インターネット上の動画サイト、ポピュラー音楽など、さまざまなメディアとの関わりを踏まえて考える必要性が浮き彫りになっている。この他にもライトノベルの作品群には、多様な問題系が見いだされる。具体的には、児童文化とヤングアダルト文化との断続をめぐる問題、海外への広がりと翻訳、青少年文化におけるジェンダーのあり方、「ラノベ読み」と呼ばれる読者たちがインターネット上を中心に編成されてきたライトノベルの「歴史」をどのように検証するかなどである。また近年では、いわゆる「ライト文芸」の出現や、ライトノベルがweb小説、時代小説に接続したことを受けて、当初ライトノベルが想定していた中高生にとどまらない幅広い年代に読者が拡散した。その意味でライトノベルは、現代において編成されている物語を考える上で欠かせない作品群として、今なお成長し続けているのである。本シンポジウムでは、こうしたライトノベルの状況を見据えながら、研究の現在と、これからどのように現代の物語を論じることができるのかについて、その方向性を探っていく。フロアも交えた質疑も行うため、積極的な議論を期待したい。

【基調報告要旨】

接点としての児童文学
―如月かずさ作品を軸に

大島 丈志

児童文学作家如月かずさは、『ライトノベル・フロントライン』第2号(2016年)のインタビューの中で、幼少期からゲームを自作し、高校時代よりライトノベルを読み、創作にあたり、ライトノベルの文体を意識しているとする。同時に、日本児童文学者協会新人賞を受賞した『カエルの歌姫』(2011年)の受賞者コメントでは、「漫画やライトノベルではできない物語」(『日本児童文学』日本児童文学者協会、2012年8月)が創作の出発点と述べる。この点から如月がライトノベルと児童文学の境を意識した作家であることが分かる。 一方で、如月かずさの作品には、様々な「サブカルチャー」が内在している。『カエルの歌姫』は、中学生の性の揺らぎ、友達との日常を描く。さらに、ライトノベル・ゲーム・マンガといった「サブカルチャー」が作品内にちりばめられている。如月作品において、ライトノベルをはじめとする「サブカルチャー」がどのように内在しているのか、それらを使用することが、どのような世界観を生み出すのか。『カエルの歌姫』を軸にして、同時期に発表された他の如月の作品も参照しつつ読みといていく。

アニメ文化が育んだ文庫レーベルの〝位置〟
―「アニメージュ文庫」からみえるもの

山中 智省

徳間書店が発行する『アニメージュ』(1978年5月創刊)と言えば、日本を代表するアニメ雑誌の一つである。この雑誌と同じ名を冠する文庫レーベル「アニメージュ文庫」は、アニメ・ファンを想定読者として1982年12月に創刊された。当初のアニメージュ文庫は、内容の異なる5つの部門(NOVEL・CHARACTER・FILM・PEOPLE・THE BEST)を擁しており、『アニメージュ』との連携を図りつつ、多種多様な刊行物を世に送り出していた。例えば、アニメ作品のノベライズやオリジナル小説のほか、人気キャラクターの写真集、傑作アニメのフィルムブック、アニメーターや脚本家の自伝など、そのラインナップは多岐にわたる。さらに、アニメージュ文庫はアニメ文化との繋がりが強い文庫レーベルの性格上、視覚メディアと活字メディアに跨った作品展開・作品受容を促し、現代のメディア横断型コンテンツの発展にも寄与してきたと考えられる。本発表では、アニメージュ文庫が創刊された1980年代を中心にその実態と特徴を明らかにし、当時の児童文化・青少年文化、ならびに後のライトノベルに繋がっていく若年層向け小説の流れにおいて、どのように位置づけられるのかを考察していく。

ライトノベルの韓国語翻訳のあり方についての考察
―渡航のライトノベル『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』を中心に

田 泰昊

韓国での日本文学の受容は、1990年代の村上春樹のヒットから増え始め、2000年代からは若者層を中心に高い人気を得るようになっている。そのうち、ライトノベルの部数の増加は特に目立つものであり、2008年には韓国で翻訳された日本の小説全体の約50%を占めるほどになった。ただし、ライトノベルの場合、出版元の多くが、マンガやアニメ関連の出版社で、他の日本文学の翻訳の様相とは異なる場合があると見られる。例えば、翻訳者が既存の文学作品の翻訳者と異なり、元マンガ翻訳者であったり、翻訳の経験は皆無だがマンガやアニメに詳しい人であるという理由で担当になったりするケースがある。このような状況は翻訳の質や具体的な翻訳のあり方にも影響を及ぼすと考えられる。ライトノベルの翻訳に関する研究はすでに2点(허경숙 2010; 김애연 2012)あるが、これらの研究はあくまでも韓国の通訳翻訳大学院で行われたもので、主に翻訳の誤りを指摘し、正しい翻訳の例を提示することに止まっていた。そこで本発表では渡航のライトノベル『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』を中心に、実際の韓国語での翻訳がどのように行われているかを具体的に提示し、そこに見られる問題点について考察したい。

(以上、案内資料より引用)

【文責:山中】


【イベント】「怪異の時空」三部作刊行記念「怪異は語る」怪異怪談研究会(1/22)

2017/01/21

ライトノベル研究会のメンバーも参加されている怪異会談研究会は、昨年、「怪異の時空」三部作を青弓社から刊行しました。その記念イベントが2017年1月22日(日)16:00より、Live Wire HIGH VOLTAGE CAFE で開催されます。

<Live Wire 告知より>

シリーズの監修を務めた一柳廣孝さんは、心霊や都市伝説などの怪異をベースにした文学研究者です。また、各巻の新進気鋭の編著者たちも登壇します。さらに、アンソロジスト・文芸評論家の東雅夫さんが途中から特別参加! 本シリーズで取り上げた、口承怪談、映画、落語、ラノベ、ゲームなど、様々な形で展開される「怪異表現のいま」に多角的に迫ります。

「怪異を語る」人々をフィールドワークした研究者たちは、その背景に何を見たか。「怪談」という装置が動くとき、語る/聞く人々の心の何を動かし、何を浮かび上がらせるのか。それはまさに、怪異「が」語る、21世紀の日本人の民俗的心性・集合的無意識の一つの断面ではないかと思われます。

怪談を愛好する人はもちろん、逆に不合理や怪異譚を忌み嫌う人にも楽しんでいただける、知的でスリリングなイベントになるはずです。

怪異を歩く (怪異の時空) 怪異を歩く (怪異の時空)
今井 秀和 大道 晴香 一柳 廣孝

青弓社 2016-09-30
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怪異を魅せる (怪異の時空) 怪異を魅せる (怪異の時空)
飯倉 義之 一柳 廣孝

青弓社 2016-12-01
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怪異とは誰か (怪異の時空) 怪異とは誰か (怪異の時空)
茂木 謙之介 一柳 廣孝

青弓社 2016-12-21
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[出演] 一柳廣孝 今井秀和  大道晴香  飯倉義之 茂木謙之介
[途中から特別参加] 東雅夫

[日時] 2017年1月22日(日) 開場・15:30 開始・16:00(約2時間を予定)

[会場] Live Wire HIGH VOLTAGE CAFE
(東京都新宿区新宿5丁目12-1 新宿氷業ビル3F)
・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6~8出口から徒歩5分
・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分
・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分

[料金] 1500円 (当日券500円up)

詳細はコチラまで。

【文責:山中】


【速報】「第2回ライトノベル・フロントライン大賞」の大賞作品決定!!

2016/12/19

大橋崇行・山中智省編著『ライトノベル・フロントライン3』(青弓社)の刊行に合わせて発表される「第2回ライトノベル・フロントライン大賞」。

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この賞は、毎年多数の作品が刊行されるライトノベルのなかから、ひとつでも多くの作品が読者の手に届き、ライトノベルを楽しむ機会が増えてくれたらという願いから創設されました。具体的には、既存の各種ランキングが取りこぼしがちな新人作家のデビュー作に注目し、商業成績に拠らず、作品としてのおもしろさをしっかり評価することを第一に考え、良質なライトノベルを再発見していきます。

第2回ライトノベル・フロントライン大賞
第2回大賞の選考対象作品は2015年1月1日~同年12月31日までに、ライトノベル研究会が指定するレーベルから刊行された新人作家のデビュー作です。詳細は12月25日発売予定の『ライトノベル・フロントライン3』誌上での発表となりますが、今回は特別に大賞作品のみ、本ブログにて先行発表します!!

【「第2回ライトノベル・フロントライン大賞」 大賞作品はこちら!! 】

<大賞>

助供珠樹[著] / 春夏冬ゆう[イラスト]
『あの夏、最後に見た打ち上げ花火は』 (ガガガ文庫)

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〈 書籍の内容 〉
彼女と出会った、忘れたくないあの夏の日
何もないのどかな田舎町・松乃に暮らす中学2年生の眞田寛樹は、幼なじみの三島桐子・親友の阿久津恒正らと、毎年変わることのない夏休みを過ごしていた。そんなある日、徹夜をしてしまった寛樹は熱中症で倒れてしまい、助けてくれた謎の美少女・伊藤ノアに恋心を抱くようになる。日本語をうまく理解することのできないノアのために寛樹は妹のなずなと一緒になって、自分たちが暮らす町を案内したりしながら、徐々に距離を縮めていく。そんな時、寛樹はノアに過去の記憶がなく、深海生物に似た奇妙な生き物と共に自身がよく通っている駄菓子屋・伊藤商店の庭に倒れていたところを発見されたという事実を知る。さらに謎の生物がしゃべる名前が、先日まで自分が読書感想文を書くために読んでいた小説の作者の本名だということがわかり、ますます混乱していく。ノアが記憶をなくしたまま不安な毎日を過ごしていると感じた寛樹は、彼女の記憶を取り戻すべく、さまざまな場所に彼女を連れて行ったり、小説内に書かれたことを調べたりしていくのだが・・・・・・。第9回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作品。中学生の男女が繰り広げる甘くせつないひと夏の青春グラフィティが登場。
(小学館HP ガガガ文庫『あの夏、最後に見た打ち上げ花火は』より)

第2回大賞は上記の通り、助供珠樹[著] / 春夏冬ゆう[イラスト] 『あの夏、最後に見た打ち上げ花火は』 (ガガガ文庫)に決定しました。なお、本大賞の選考プロセスや候補作品、受賞者インタビューなどを、12月25日発売予定の『ライトノベル・フロントライン3』に掲載します。ぜひお手に取ってご覧ください!!

ライトノベル・フロントライン3: 特集 第2回ライトノベル・フロントライン大賞はこれだ! ライトノベル・フロントライン3: 特集 第2回ライトノベル・フロントライン大賞はこれだ!
大橋 崇行 山中 智省

青弓社 2016-12-25
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あの夏、最後に見た打ち上げ花火は (ガガガ文庫) あの夏、最後に見た打ち上げ花火は (ガガガ文庫)
助供 珠樹 春夏冬ゆう

小学館 2015-05-19
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【文責:山中】


【新刊小説】大橋崇行『レムリアの女神 La Diosa del Lemuria』(未知谷)

2016/09/22

ライトノベル研究会のメンバーである大橋崇行が、新刊の小説『レムリアの女神 La Diosa del Lemuria』を、未知谷から刊行します。9月25日の発売予定となります。
Amazonのページ→ こちら

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表紙カバーのデザインは、防人さん(pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=211515 )です。
今回はいわゆるライトノベルではなく、書店では「文芸(SF、ファンタジー、ミステリなど)」に並ぶことが多いと思いますが、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。
【文責:大橋】


フランス語ライトノベル翻訳のその後(2016)

2016/09/18

ここのところ、ライトノベルの英語翻訳からアメリカのヤングアダルト小説の話ばかりしていて他言語の話は放ってありました。先日、何気なく紀伊国屋のフランス語書籍の棚の横を歩いていたら、ライトノベルを見つけてしまいました!『狼と香辛料』『ソードアートオンライン』『ダンジョンで出会いを求めるのは間違っているだろうか?』『ログ・ホライゾン』が並んでいます。

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そういえば、フランス語訳の有無を調べてから4年以上が経過しました。あのときは、かなり悲惨な翻訳状況だったのですが、さすがに状況が進んでようです。調べてみると、OFELBEというライトノベル専門レーベルが立ち上がっているではありませんか。現在、発刊も含めれば、

  • DANMACHI   -La Légende des familias  (ダンジョンで出会いを求めるのは間違っているだろうか)
  • Durarara!! (デュラララ‼︎)
  • Log Horizon (ログ・ホライゾン)
  • Spice & Wolf (狼と香辛料)
  • Sword Art Online  (ソードアート・オンライン)
  • The Irregular at Magic High School  (魔法科高校の劣等生)

の6シリーズが扱われています。フランス語訳なのに英語のタイトルだらけなのは少し不思議に感じられるかもしれませんが、フランスのオタク達の主流は、まず英語で情報を得ているということの反映なのかもしれません。(一部には、日本語を直接読んでいるオタクもいますけど、、)DANMACHIというタイトルが笑えますけれど、これも英語のオタクの世界でDANMACHIという略称が広がっていたからだと思われます。また、母国語優遇政策をとってきたフランスでも、最近は英語のタイトルをそのままにしてフランス語訳するケースが結構ありますから、無理してタイトルをフランス語に訳すことも無いのでしょう。

(実は、イタリアでもライトノベルの専門レーベルが立ち上がっているのですが、そのあたりの報告はローマで『僕は友達が少ない』のイタリア語訳をゲットしてきた大橋さんの投稿を待ちたいと思います。)

さて、ライトノベルの英語翻訳について調べていく中で突き当たった「ヤングアダルト小説という壁」については、今までの連載の中で何回か触れてきました。ごく大雑把にまとめれば、「アメリカのヤングアダルト小説の中には、ライトノベルっぽい小説は既にあったので、アメリカの読者にとってライトノベルはさほど目新しいものには映らなかったのではないか。特に、初期の拙い翻訳文では既存のヤングアダルト小説に対抗できなかったのではないだろうか」というものです。ライトノベルにしてもヤングアダルトにしても、消費文化の行き着く先は似たようなことになるのではないか、というのが私の抱いた感想でした。

で、この推測はフランス語の世界でも成立するんだろうか?というのが、私が以前から抱いていた疑念でもあります。フランスにしても消費文化の伝統はアメリカや日本などよりも長く、爛熟したというか腐った文化を培ってきたわけですから。ロマン・アドレサン(Roman Adolescents)という10代の若者向け小説市場というのも成立しています。このあたりは、言語能力の壁があって中々調べられないでいるのですが、ネットで引っかかった面白そうな事例を紹介しておきます。

 

“Un Amour de Geek”(オタクの恋)41eogjsnc6l-_sx349_bo1204203200_

もう、そのまんまのタイトルですけど、Amazonに載っていたあらすじも、タイトルそのまんまです。

「トーマスはオタクだ。彼はこれまで、実生活にうごめく不愉快なことを避け続けてきた: 退屈な学校ではフランス語の先生がうんたらかんたら。彼が抱えた問題は、彼が恋に落ちたエステルである。 彼女は馬の背に飛び乗り、森の中の光を愛し、旅することを夢見ている。コンピューターが大嫌いなエステルは、彼がスクリーンにもう近寄らないと誓わなければ彼とはデートしないという。」(一部翻訳できなかったので誤魔化しました。)

中身の文章は読んでいませんが、「自分の世界に引きこもっている男の子が活動的な女の子に引っ張り回される」というテーマは実にラノベっぽい。

“Blind Spot”(ブラインド・スポット)

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日本趣味の本だけを出す独立系出版社らしいのですが、このシリーズは舞台が東京で日本人の女子高生Ayakoが目の障害を乗り越えて声優を目指すというお話。マンガに見えるかもしれませんが、小説です。これを見ながら、フィリピンで見た「ラノベっぽい少女小説」を思い出してしまいました。この本をフィリピンの書店の少女小説の棚に並べて置いておいても、なんの違和感もなさそうです。

日本が舞台で日本人が主人公の小説がフランスで書かかれているというのは、不思議な感じがするかもしれません。でも、まあ、日本の少女マンガだって、70年代頃まではアメリカやフランスを舞台にして、アメリカ人やフランス人を主人公にした作品が量産されていた訳です。(そんな時代は知らないという人は、ぜひ萩尾望都全集を参照ください。できれば忠津陽子あたりの、笑ってしまうぐらいチープなアメリカ学園ドラマも読んでいただきたいと思いますが、入手は困難かもしれません。)文化的な思い入れが激しくなると、こうした現象も多々起こるということなのでしょう。ご存知のようにフランスにおける日本趣味は長く続いており、マンガの世界では10年ほど前にやはり日本が舞台で日本人が主人公(女子高生のKiyoko)の”Pink Diarly“(ピンク・ダイアリー)という作品が現れています。

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この2作の事例を見ながら考えるのは、文芸の模倣は案外に簡単だということです。面白いと思った文芸を模倣して、自国の中に取り込んでしまう貪欲な力とでもいうのか。考えてみれば、アメリカのコミック文化を取り込んで成立したのが日本のマンガなのであれば、それが更に他国に取り込まれて咀嚼されてもなんの不思議もない訳です。フランス人が日本のアニメやマンガで馴染んだテーマやプロットを、そのまま小説で書くことも起こるでしょう。前掲の『ブラインド・スポット』なんていうのは、そういう例だと思います。そして、そのうちにフランス流に咀嚼された小説が書かれても不思議はないし、もうすでに書かれているかもしれない。そのとき、すでにある(前掲の『おたくの恋』のような)ロマン・アドレッサン小説とどれほどの違いが見られるのかというのは興味深い論点だと考えています。

(報告者:太田)


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