笹本祐一『妖精作戦』について

12月22日、東京創元社の創元SF文庫より笹本祐一『妖精作戦』シリーズ(全4巻)のPARTⅡ「ハレーションゴースト」が復刻刊行されます。
すでに第1巻は今年8月に刊行されており、各所で話題を呼びました。

ぶく速:笹本祐一『妖精作戦』四部作が復活!解説:有川浩 2011年8月以降刊行予定
Togetter:笹本 祐一氏(sasamotoU1 )著『妖精作戦』復刻。その反響

同シリーズは笹本祐一氏のデビュー作として1984年に朝日ソノラマ文庫が刊行。
1994年の同文庫による新装版を経て、今回の創元SF文庫版は朝日ソノラマ文庫版の初版から数えて3度目の新装版となります。
(第1巻のみ朝日ソノラマ文庫版での表紙イラスト変更(若菜等→平野俊弘)があったため、第1巻については4度目)

[朝日ソノラマ文庫版の初版(第1巻表紙は若菜等)]

[朝日ソノラマ文庫版の新装版(表紙は御米椎)]

[創元SF文庫版『妖精作戦』]

はてなキーワード:妖精作戦とは
東京創元社HP:妖精作戦 PART II ハレーションゴースト

また現在、絶版となった漫画やライトノベルを電子書籍として配信するウェブサイトJコミでは、上掲の朝日ソノラマ文庫版の新装版第1~2巻が無料公開されています。

JコミHP:妖精作戦

さて、すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、『妖精作戦』シリーズはライトノベルの先駆けと見なされることもあり、ライトノベルの歴史(特にその前史部分)を追う上で非常に重要な作品と言えます。
その所以としては、ライトノベルの特徴のひとつとしてよく指摘される「同時代読者との意識・情報の共有」が挙げられるでしょう。
この点について三村美衣氏は「ライトノベル30年史」(日経BPムック『ライトノベル完全読本』2004年8月)のなかで、次のように述べています。

80年代中ごろのソノラマを牽引した立役者の一人が笹本祐一だ。(中略)そのデビュー作『妖精作戦』は、誘拐された超能力少女を高校の同級生グループが救出しようとする話だが、高校生がバイクに始まり、原潜から揚げ句の果てみはスペースシャトルまで操縦する。スケールアップしていく破天荒な設定が注目を集めた。後の書き手にも大きな影響を与え、昨年の話題作、秋山瑞人の『イリヤの空、UFOの夏』も本作をなぞるように展開している。主人公たちはただの高校生だが、おたく的な知識が事件解決の手段として使われている。また70年代から80年代のアニメや特撮物を共通基盤にした独特のノリ、型番やスペックをそのまま出すメカの書き込みなど、同時代的情報を共有する小説の流れは本作から始まったといっていい。
(76~77頁より引用)

なお当時の反響はかなりのものであったようで、創元SF文庫版『妖精作戦』(2011年8月)の解説を担当している有川浩氏の言葉からも、その大きさをうかがい知ることができます。

私たちの年代に『妖精作戦』がもたらした衝撃は、おそらく現在の若い人には説明しきれない。(中略)『妖精作戦』は当時初めて現れた、現実世界に生きている等身大の私たちのための物語だったのだ。こんな物語を待っていた。『妖精作戦』は当時の若者に圧倒的に支持された。等身大の自分たちなんて平凡でつまらないと思っていた。そんな自分たちに物語の主役を張れるほどのきらめきを見出してくれたのが『妖精作戦』だったのだ。
(327・329~330頁より引用)

まだ未読の方はぜひ今回の復刊を機に、一度読んでみてはいかがでしょうか。
文章が多少古臭く感じる部分もあるかもしれませんが、「同時代読者との意識・情報の共有」という、現在のライトノベルに通じるものが確かにあるなぁ~と実感できます。
初版第1巻の発売からすでに27年。
それでもなお復刊されるという状況を見るに、上記の要素を含めて、時代を経ても変わらず読者を魅了する「何か」がこの作品にはあるのでしょう。
その意味では筒井康隆『時をかける少女』などと同じく、今後も若年層に読みつがれていく作品のひとつと言えると思います。

【文責:山中】

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