【新刊告知】山中智省『ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語ー狼煙を上げた先駆者たち』勉誠出版(2018年1月刊行予定)

2017/12/06

私事で大変恐縮ではございますが、このたび勉誠出版より、単著『ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語ー狼煙を上げた先駆者たち』を刊行する運びとなりました。本日(12/5)情報が出ましたため、こちらのブログでも告知をさせて頂きます。

これまで私はライトノベル研究会をはじめ、日本近代文学会や日本出版学会などで研究発表の機会を頂き、創刊当時の『ドラゴンマガジン』(富士見書房)に関する報告を複数回行ってきました。ご存知の方はおそらく「ああ『ドラマガ』発表の人か~」とお思いかもしれませんが(笑)そして今回の単著はそれら報告の集大成でもあり、今後の研究に繋げていくための足掛かりでもあります。

[参考]ラノベ史探訪(4)―ラノベ専門誌の始まりを見てみよう【「ドラゴンマガジン」編】

今回の単著では、およそ5年ほどかけてコツコツ収集してきた多数の資料に加え、『ドラゴンマガジン』の創刊に関わった編集者、そして同誌の作家や読者の方々のご協力で実現したインタビューをもとに、『ドラゴンマガジン』創刊の経緯や周辺の同時代状況、そして現在の「ライトノベル」が誕生していく過程に迫っていきます。現時点での刊行予定は2018年1月となっており、皆様のお手元に届くまで今しばらく時間が掛かるかと思われますが、刊行の際はぜひお手に取って頂けましたら幸いに存じます。どうぞよろしくお願い致します。

≪目次≫

はじめに

第1章 『ドラゴンマガジン』創刊前後の状況
Ⅰ 〈ライトノベル雑誌〉への注目
Ⅱ 創刊から躍進までの軌跡
Ⅲ 雑誌・文庫レーベル・新人賞の関係性
Ⅳ 創刊号にみるビジュアル重視の姿勢

第2章 創刊を手がけた編集者たち
Ⅰ 『ドラゴンマガジン』創刊責任者インタビュー 小川洋
Ⅱ 表紙・グラビア・取材記事担当インタビュー 竹中清
コラム① 誌上に現れた二つのメディアミックス

第3章 創刊号の誌面を飾った作家たち
Ⅰ 小説家インタビュー 竹河聖
Ⅱ イラストレーターインタビュー あらいずみるい
Ⅲ マンガ家インタビュー 見田竜介
コラム② 作家の共演が生み出した「イマジネーションの世界」

第4章 『ドラゴンマガジン』が育んできたもの
Ⅰ  読者投稿ページ「ガメル連邦」担当インタビュー 加藤一
Ⅱ 小説家インタビュー 新城カズマ
Ⅲ 小説家インタビュー 伊藤ヒロ
コラム③ 読者・作家・編集者が交差する場

第5章 〝ビジュアル・エンターテインメント〟の誕生と展開
Ⅰ 「メディアミックス世代」と呼ばれた読者たち
Ⅱ ビジュアル重視の小説雑誌と読者―『獅子王』『ドラゴンマガジン』を例に
Ⅲ 『ドラゴンマガジン』が生んだ〝ビジュアル・エンターテインメント〟

おわりに―そして「ライトノベル」へ

あとがき
参考文献一覧
過去の作品を知りたい・読みたい・入手したい人のための資料探索ガイド
『ドラゴンマガジン』基本情報一覧(1988~1995年)

ライトノベル史入門  『ドラゴンマガジン』創刊物語: 狼煙を上げた先駆者たち ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語: 狼煙を上げた先駆者たち
山中智省

勉誠出版 2018-01-31
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なお、勤務校である目白大学の新宿図書館で現在開催中の企画展示「ライトノベル誕生の軌跡 ―ようこそ〝ビジュアル・エンターテインメント〟の世界へ」は、本書で紹介する事例の一部を含んだものとなっています。もしもご興味がありましたら、こちらもぜひご覧頂けましたら幸甚です。

【文責:山中】

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マレーシアのライトノベル

2017/11/05

インドネシアのジャカルタの後は、マレーシアのクアラルンプールに向かいました。ライトノベル翻訳探しの旅は続きます。

マレーシアはインドネシアよりも人口はぐっと少ないのですが、石油や鉱物資源をうまく活用して近代国家を作り上げることに成功した国です。首都クアラルンプールは(ジャカルタに比べると)すごく洗練された都会でした。

今回も、まず目的に見定めたのがは紀伊国屋。

ジャカルタのと似たような写真が続くのもアレなので結論から書きます。日本語の本を除けば、英語、中国語、マレーシア語のマルチリンガルな本屋です。そしてこれは、他の大型書店も同じでした。状況はジャカルタと同じでした。(そして後で書くつもりですが、インドネシア語とマレーシア語はほとんど同じ言語です。)

ただ、中国語の本の比率がジャカルタで見たのよりは多い。そして、ありました!軽小説(ライトノベル)のコーナー!

そして、中華圏でおなじみの武侠小説。この分野はB級っぽかったり大河ドラマっぽかったり色々あるのですが、少しおしゃれな感じの本も並んでました。

網路小説というのはネット小説のことです。

科幻小説(SF)もあります。

これらが香港・台湾・本土からの輸入ばかりかと言うと、そうとも限らないらしい。例えば、中国語のヤングアダルト小説っぽいコーナーがあって、そこの本の出版社を見ると、マレーシアの出版社だったりします。つまり、マレーシア国内で中国語の出版をしているのです。

街歩きをしていても、中国系書店が色々と面白いのです。やってきたのはチャイナタウン。

とある店の奥を覗いてみると、まさにマンガが山積み。

日本の翻訳マンガばかりではなく、結構怪しそうな本があるではありませんか!「言情小説」というカテゴリーがあったのですが、ポルノなんでしょうか、、、

「中華圏には、もともとライトノベルっぽい小説を受け入れる素地があったのではないのか」というのが、私の仮説だったんですが、こういうセクシャル系を強く匂わせる本を見ているとますますその感を強くしてしまいます。

もう一々調べるのも面倒臭くなる物量で、ラノベっぽい本も一杯。おそらく、中国語オリジナルのものが相当並んでいるはずです。そして古本屋に行くと、アメリカンコミック風の中国マンガもあって中々に楽しかったです。

で、マレーシア語の本はどうなのか。中国語ほどではないですけれど、そこそこ健闘しています。Novel Remajaは「ティーン小説」の意味です。アレーシア語のヤングアダルト小説ということになりますが、少女小説っぽくってラノベっぽい。フィリピンと似た感じです。

マンガも、現地化していますね。

そして、、、ティーンズ向けフィクションのコーナーに目指すものはありました。

マレーシア語に翻訳されたライトノベルは米澤穂信の古典部シリーズ、『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』でした。日本に帰ってきてからマレーシアの紀伊国屋のサイトで調べると『氷菓』も在庫があったらしいのですが、私が見たときにはマンガ版しか見当たりませんでした。シリーズで刊行されているのですから、そこそこ売れているということなのでしょうか。

結論として、「マレーシアにはライトノベルの中国語訳なら一杯ある。マレーシア語翻訳はまだあまりない」でした。

ところで、インドネシアとマレーシアの言語状況については考えておかなければいけない点があります。機会があれば、そのお話も書きたいと思っています。

(太田記)


インドネシアのライトノベル

2017/11/05

外国の本屋で日本のライトノベル翻訳を探すというこの連載、しばらく途絶えていました。今回、東チモール(インドネシアの東の端に位置する国)に行く機会があり、その帰りにジャカルタに立ち寄って久々にライトノベル探しに勤しみました。東チモールのライトノベル探しはやらなかったのかと聞かれそうですが、首都ディリの本屋全てを回った上で(5軒しかありませんけど)「そんなものは無い!」と断言します。あそこはそもそも書籍の絶対量が少なすぎるのと、人口が100万人なのでライトノベルの翻訳出版が行われるなんてことは当面有り得ないのです。

それはともかく、インドネシアのジャカルタは人口1000万人の大都会です。これまでの経験上、ラノベ翻訳が一番有りそうな海外の本屋である紀伊国屋に向かいました。

まず、マンガ関係から見ておくと、日本語のマンガがあり、英語翻訳のマンガとアメリカのコミックがあり、中国語翻訳のマンガがあり、インドネシア語翻訳のマンガ、インドネシア語オリジナルのマンガがあります。

日本語書籍があるのは紀伊国屋だからなのですが、マンガに限らず、書籍としては英語・中国語・インドネシア語の3言語の本が置いてあります。これは他の書店でも見られた現象で、要するにインドネシアの本屋はマルチリンガルなのです。(これはフィリピンでも、タイでも見られた現象ですね。)そして、インドネシア語よりは英語の本の方が多いようです。特に専門書の類はインドネシア語が弱いように見受けられました。

マンガの話に戻りますが、日本のマンガは英語と中国語とインドネシア語の3種類の翻訳が販売されているということになります。結構凄い状況だと言えないでしょうか?

さて、肝心のライトノベルです。紀伊国屋なので日本語のライトノベルはいっぱいあります。

英語のライトノベルを探したら”MANGA”の棚にありました、、、どうも独立ジャンルとして認めてられていない模様。

そして、インドネシア語のライトノベルを探したのですが、、、、無い!中国語のライトノベルも見当たらない!

もう一軒、別の本屋に行って見ました。こちらにはインドネシア語のマンガ(コミック)がいっぱい置いてありました。結構自前でマンガが生産されていますね。輸入マンガよりも薄くて安い感じです(値段を控えるのを失念しました!)。

中国語のオリジナル漫画(マンファ)も結構出ています。

しかし、ライトノベルは見当たりません。インドネシア語のライトノベル探し、今回は敗退のようです。

なお、紀伊国屋でも、こちらの本屋でも少女小説っぽいのがそれなりにありました。フィリピンのラノベっぽい少女小説の大群、あるいはBL花盛りのタイよりはぐっとおとなし目ですが、やはり少女小説はあるのです。

この少女小説を見ていたら、ハングルが入ってる?でもインドネシア語だし著者名からみても翻訳というわけでもなさそう。買ってきて中身を見ていると、韓国人名が出てくるので舞台が韓国なのかもしれません。

さらに表紙に「愛している」という日本語の入った本まで!これまた翻訳では無いのですが、どうも憧れの日本に行くことになった女の子の話らしい。中を見ていると”yuki-chan”(ゆきちゃん?)のような呼びかけもあります。

韓国の少女小説が中国で大流行して、「韓国っぽい」少女小説が中国で大量生産された時期があったことは知っていましたが、そのインドネシア語版もあったとは!そしてその余波なのか日本を舞台にした小説もあったとは。

一度どこかで書いた覚えがあるのですが、昭和の少女マンガにはアメリカやフランスを舞台にアメリカ人やフランス人が主人公のマンガが結構ありました。萩尾望都ですら、そういうマンガを描いていたのです。それと同じ現象が、日本や韓国を対象にしてインドネシアでも起きているのかもしれません。

(太田記)


アメリカのYA小説その後(2017)

2017/09/06

かなり前に、アメリカのヤングアダルト小説(YA)の話を書いていましたが、少し書き足しておきます。

まず、以前に紹介した”Me and Earl and the dying girl”(『僕とアールと死んでいく女の子』)
https://societyforlightnovel.wordpress.com/2016/02/17/アメリカのヤングアダルト小説1/
の日本語翻訳が8月に出版されています。

金原瑞人訳『ぼくとあいつと瀕死の彼女』ポプラ社、2019年

金原先生、やはり目をつけていらっしゃいましたか。

訳文はかなり、はっちゃけていて良い感じです。

I have no idea how to write this stupid book. (原文 p.1)
いったい、どう書けばいいんだよ。こんなくだらない話。(金原訳 p.6)

うまいなあと感心したんですが、原文と比較しながら読んでいるうちに、翻訳の恣意性というか、訳文の妥当性みたいなものについて少し考え込みました。口語に寄せすぎているようにも思えるのです。例えば、以下の訳文:

It was incredible. (原文 p.81)
すっげぇよかった。(金原訳 p.6)

原文はいかようにでも訳せるかとは思います。「信じられなかった」とか「途方もなかった」とか選択肢はかなりありますが、その中から主人公の口調として最適なものとして訳者が選んだ結果としての「すっげぇよかった」なのです。問題は、それが主人公の「語り」として妥当なのかどうかということ。

主人公は、中流のユダヤ人家庭に育っていて(作者も中流ユダヤ人)、グレている訳でもない。父親は週に一コマしか授業していないとはいえ大学教授だし、母親はNGO職員でインテリっぽい。その母親の言うことに主人公はいつも渋々ながらも従っている。黒人の崩壊家庭のアールとは付き合っているけど、悪いことには手を出さず二人で映画を撮っている。アールの家にはいくらでも転がっている、タバコにも酒にもドラッグにも手は出していない。根が真面目なんだろうなという印象です。

主人公の語りが途中で箇条書きになったりしますが、「ちゃんとした文章にするのが面倒臭いので後は箇条書きにしとくわ」のような主人公の身振りの背後に、要点をまとめてノートに取っておくのが癖になっている優等生根性みたいなものもチラチラします。つまり、この主人公は自身の語りにsucks(金原訳「サイテー」)みたいな俗語を多用していますけれど、真面目な子が少し無理して俗っぽく語っている印象が強い。というか、語りの中のそういう俗語表現のギャップみたいなものを楽しむ小説であるような気がするのです。しかし、金原訳は全体を口語表現に寄せます。例えば、以下の文章です:

In fact, high school is where we are first introduced to the basic existential question of life: How is it possible to exist in a place that sucks so bad? (原文p.5)
だって、高校ってところは人生で誰もが抱くこういう疑問に初めてぶち当たる場所だから。どうやったらこんなサイテーなところで生きていけるんだ?(金原訳)

“the basic existential question of life”が「人生で誰もが抱くこういう疑問」と訳されてます。以前、私がこの本を紹介した時にはこの翻訳本は出てませんでしたから、私は勝手にこの部分を「人生の基本的実存的問題」と訳しておきました。原文にはexistentialという少し硬めの単語が使われる一方で、その直後の太文字部分ではa place that sucks so bad(クソみたいに最悪な場所)という俗語(sucks)混じりの表現が出てきますから、そのギャップみたいなものを強調してみた訳です。金原さんの訳「the basic existential question of life/人生で誰もが抱くこういう疑問」では砕いて訳しすぎじゃないのか。そんなことを思いました。

ただ、まあ、ラノベ的な文章に慣れた日本の読者相手には丁度良いのかなとも思えます。翻訳では、誰が読むのかを考えて、そこに合わせて訳文を考えていかなければならないのですが、今の日本の標準的な若い読者層を考えた場合、こういう語りで読ませてしまうのも十分ありなのかなとも思えました。

ともあれ、英語でしか読めなかった時にはなかなか人にオススメできなかったのですが、これで気楽にオススメできます。是非どうぞ。

*****

次に、アメリカの本屋のYAの棚をぶらぶら歩いていて、「書店員のオススメ」みたいなポップを頼りに本を漁っていたらこんな本にぶち当たりました。Jerry Spinelli “Stargirl” Ember

2000年の作品なので決して新しい小説ではありませんが、書店員がオススメするということは、流行り廃れが激しいYAの中での古典的なポジションの作品なのかもしれません。よくよく調べると、日本語の翻訳も出てました(『スターガール』2002年、理論社)。面白かったので、英語で読み切っています。

読み始めてすぐに「これはMPDG(マニック・ピクシー・ドリーム・ガール)じゃないか!」と驚きました。MPDGについては https://societyforlightnovel.wordpress.com/2016/03/08/アメリカのヤングアダルト小説(5)/ でも紹介しましたが、日本語で雑に訳すと「躁的不思議ちゃん」。一言で言えばエキセントリックで突拍子も無いことを言ったり実際にやっている女の子に、平凡な男の子が振り回される話です。実際、慌てて検索してみたら、これはMPDGの元祖的な作品だとしている人もいました。

Stargirlではヒロインは奇妙奇天烈な衣装で学校に現れて(アルプスの少女ハイジっぽかったり、キモノだったり、西部開拓時代の格好だったりします)、背中にはウクレレを背負っていて、昼休みの食堂ではその日の誕生日の生徒のために「ハッピバースデー、トゥーユー」を歌い、数学の授業では突然、自作の「二等辺三角形の歌」を歌ったりします。当然生徒たちはドン引きなのですが、彼女は全く意に介していない(ように見えます)。学校中が彼女の存在をいぶかしむ描写が続く中で、以下のような文章が出てきます(太田訳):

雲ひとつない学校の上空にたった一言が浮かんでる感じだ。

          はあ?

以前MPDGを紹介した際に、涼宮ハルヒの翻訳ノベルがアメリカで例外的に売れたのは、もともとああいうキャラクターはMPDGとしてアメリカのYA市場では普通に受け入れられていたからということを書いた私としては、ちょっと見逃せません。そう言えば、ハルヒの翻訳本の表紙はこの本の表紙に雰囲気がかなり似ていませんでしょうか?おそらく出版社も似たような読者層を狙ったものと思われます。考えてみるとハルヒの出版は2003年なので書かれた時期もかなり近いのです。

もっとも似ているのはヒロインがぶっ飛んでいて、周りとズレているというところだけで、話の内容は『ハルヒ』とはかなり違います。
ハルヒはサブカル系の事柄(タイムトラベル、宇宙人、超能力者etc)に固執しますが、スターガールが固執するのは「親切」とか「思いやり」。そして、ハルヒが一般の生徒からは変人扱いされて放っておかれているのとは対照的に、スターガールは学校中からネグレクションを受けます。同調圧力と、それに従わない者を村八分にする学校社会問題みたいなものが扱われることになるわけです。そしてハルヒの内面があまり描かれない(『涼宮ハルヒの憂鬱』でヒロインの内面吐露が一箇所だけ出てきて、その後は一切内面描写されなくなる)のに対して、スターガールの内面はかなり突っ込んで描かれます。ということで、日本のライトノベルからは少し離れた、正統的なYA小説ではあります。
ところで、この小説の語り手の男の子というのがかなり情けない。スターガールが一時的に学校の人気者になって、そこから村八分に転落する直前のタイミングで彼はスターガールと恋仲になるのですが、そのために彼も一緒にネグレクションを受ける羽目になります。最初は二人でなんとか事態を打開しようと頑張るのですが、彼はやがて諦めてしまい、そこから先はスターガールが一人で自分を貫いていく姿を傍観していくだけ。スターガールはおそらく少女小説なので、語り手の男の子は視点として利用されているだけなのだろうとは思いますが、それにしても情けない!
こうしてみると『ハルヒ』の語り手(キョン)というのは、傍観者の立場を保持しながらも、語りが相当に個性的だったし捻くれていて、そこがあのテキストの読ませどころだったんだろうなと再認識できました。

(太田記)


嵯峨景子『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』関連イベント/講演情報まとめ(2017/03/26時点)

2017/03/26

昨年12月に『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』(彩流社)を上梓されたライトノベル研究会メンバーの嵯峨景子氏。同書は発売後1ヶ月で重版を果たし、現在も注目を集め続けています。そんな同書にちなんだイベントが来月4月以降、各所で開催されることになっていますので、現時点での情報をまとめてみました。

なお、参加にあたっては事前申し込みが必要な場合がありますので、詳細につきましてはリンク先をご確認下さい。

コバルト文庫で辿る少女小説変遷史 コバルト文庫で辿る少女小説変遷史
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『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』の著者・嵯峨景子先生トークショー&サイン会情報

日時:2017年4月9日(日) 15時から17時を予定
場所:書泉ブックタワー9Fイベントスペース(秋葉原)
詳細はコチラ

■日本出版学会・出版史研究部会「少女小説ジャンルの変遷―コバルト文庫とその読者層を中心に」

日時:2017年4月28日(金) 18時30分から20時30分
場所:日本大学法学部三崎町キャンパス 本館2階第2会議室
詳細はコチラ

■日比谷カレッジ「少女小説は死なない―氷室冴子から現在まで」

日時:2017年05月16日(火) 19時から20時30分
場所:千代田区立日比谷図書文化館 地下1階 日比谷コンベンションホール
詳細はコチラ

【文責:山中】


ラノベ史探訪(番外編)-続・「富士見美少女文庫」の名称はどこから来たのか?

2017/03/20

本ブログでは久々の更新となる連載「ラノベ史探訪」。WEBでは第20回まで更新を続けてきたこの連載ですが、現在は2015年10月に創刊した『ライトノベル・フロントライン』(青弓社)に掲載の場を移しておりますので、よろしければぜひそちらもご覧頂けましたら幸いです。

<参考:『ライトノベル・フロントライン』掲載版「ラノベ史探訪」>

第1回『アルスラーン戦記』でたどる「ファンタジーフェア」の軌跡
第2回 専門レーベルの誕生―「角川文庫・青帯」から「スニーカー文庫」へ
第3回 続・専門レーベルの誕生―角川ルビー文庫に引き継がれた〈ピンク帯〉

さて、今回は「番外編」と題しまして、以前にも取り上げた「富士見美少女文庫」に関する追加調査の結果を、簡単ですがご報告出来ればと思います。

<参考:過去の連載分>
ラノベ史探訪(18)-「富士見美少女文庫」の名称はどこから来たのか?
稲葉真弓氏について

ピンとこない方のために解説しますと、「富士見美少女文庫」はかつて富士見書房が刊行していた文庫レーベルで、正式名称は「富士見文庫」。刊行期間は1986~93年の7年間で、作品数は全30タイトルと決して多くありません。また、現在は絶版になっていますので、若い世代ほど目にする機会は少ないと思われます。

この文庫レーベル、一部では大変よく知られているんですね。その理由としてはまず、1980年代に一世を風靡した美少女アニメ『くりいむレモン』シリーズのノベライズを多数刊行していたことが挙げられるでしょう。また、それらの作品の執筆者であった倉田悠子氏が、実は2014年に紫綬褒章を受賞した作家・稲葉真弓氏であったことも、近年になって注目を集めるきっかけになったかと思います。

刊行作品(全30タイトル)

なお、この文庫レーベルの詳細は拙稿「〈富士見文庫〉検証―ライトノベルとジュブナイルポルノの〝源流〟をめぐって―」(『コンテンツ文化史研究』次号に掲載)にまとめておりますので、コンテンツ文化史学会の学会誌の刊行後にご参照頂ければと。そういえばこの件、昨年末にもTwitterで告知したんですが……もう刊行されるはずなんですけどね(汗) 詳細が分かりましたら再度告知します、はい。

さて、この文庫レーベルについて私は以前、次のように書いていました。

《2013/01/14 追記》
「富士見美少女文庫」の名称を誰が命名したのか?については、現在も使用された当時の資料が未発見のため、版元によるものであったか否かは断定出来ない状態です。また別の可能性として、版元による「美少女文庫」という名称の使用を受けた読者側による命名であったことも考えられるかと思います。
(ラノベ史探訪(18)-「富士見美少女文庫」の名称はどこから来たのか?)

この記述から早4年―。「富士見美少女文庫」の名称がどこから来たのか?については、私の力不足もあり、ずっとその答えがはっきりとしないままでした。

ところが最近になって、この長年の疑問を解消する重要な手掛かりを入手することに成功。それが以下の写真の資料になります。

倉田悠子『レモンエンジェル えりかのバイバイ・ララバイ』1988.07.
倉田悠子『レモンエンジェル 美希のラブ・ラビリンス』1988.09.
倉田悠子『ジュラハンター・ケネス キ・キララの妖女』1989.01.

入手先は「まんだらけ」の通信販売でした。これまで「美少女文庫」と記載された帯は何点か確認されているのですが、通信販売のページに掲載されていた商品写真を見る限り、上掲の帯は未見でしたので早速注文&入手。すると帯の背表紙側に「富士見美少女文庫」の文字がはっきりと記載されているではありませんか。いやはや、目にした時は本当に手が震えましたね。

今回入手したこの資料から、版元である富士見書房が「富士見美少女文庫」の名称を使用していたことが確認出来ました。この名称が刊行当時、作家、読者、編集者の間でどの程度流通していたのかは今後の調査課題ですが、少なくとも版元が名称を提示していたことは間違いないことになります。現時点の私見ですが、正式名称は「富士見文庫」のままであった以上、「富士見美少女文庫」はあくまでPR目的の通称であった可能性が高いのかなぁと。

上記の点については引き続き調査を行い、またご報告出来ることが増えましたら、あらためてお知らせ致します。今後とも連載「ラノベ史探訪」をどうぞよろしくお願い致します。

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【文責:山中】


【イベント告知】黒史郎×一柳廣孝×山中智省×大橋崇行「ライトノベルは越境する!」(『ライトノベル・フロントライン3』(青弓社)刊行記念/2017年3月13日)

2017/02/25

『ライトノベル・フロントライン3』の刊行を記念し、下北沢の本屋B&Bにて以下のイベントを開催致します。

黒史郎×一柳廣孝×山中智省×大橋崇行「ライトノベルは越境する!」
『ライトノベル・フロントライン3』(青弓社)刊行記念

日時:2017年3月13日(月) 20:00~22:00
場所:本屋B&B (世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F)
イベントの詳細はコチラ

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【イベント情報】

中学生・高校生からアラフォーまでの読者を引き付け、一大ジャンルへと成長したライトノベル。ラノベは、マンガ・アニメへと越境して多メディア展開を果たすと同時に、各メディアから越境してくる作品も受け入れています。

一方で、刊行スピード・サイクルが早いうえに、いまや文庫だけでなくカルロ・ゼン『幼女戦記』などのように四六判などの判型で文芸書扱いでのレーベルも刊行されています。作品内容も非常に多岐にわたっていることもあり、ラノベがもつ懐の深さや魅力、ポテンシャルはいまだつかまえにくい状況です。

現在のラノベがもつ可能性はどこにあるのでしょうか?

本イベントでは怪異怪談を扱う作品を多く世に放ち、ラノベも執筆している黒史郎さんをゲストに迎えて、『ライトノベル・フロントライン3』で特集したメディアミックスの視点から、ラノベの「いま」と「これから」を議論します。作家と評論家・研究者とが真正面から語り合う貴重なイベントです。

みなさま、ぜひ足をお運びください。

【出演者プロフィール】

黒史郎(くろ・しろう)
作家。2007年、「夜は一緒に散歩しよ」で第1回「幽」怪談文学賞長編部門大賞を受賞。著書に『実話蒐録集』シリーズ(竹書房)、『乱歩奇譚』シリーズ(光文社)、『童提灯』(創土社)、『怪談撲滅委員会 死人に口無し』(KADOKAWA)など多数。

一柳廣孝(いちやなぎ・ひろたか)
横浜国立大学教員。専攻は日本近現代文学・文化史。著書に『〈こっくりさん〉と〈千里眼〉』(講談社)、『催眠術の日本近代』(青弓社)、『無意識という物語』(名古屋大学出版会)など。

山中智省(やまなか・ともみ)
目白大学教員。専攻は日本近代文学、サブカルチャー研究。著書に『ライトノベルよ、どこへいく』(青弓社)など。

大橋崇行(おおはし・たかゆき)
作家。東海学園大学教員。専攻は日本近代文学。小説に『レムリアの女神』(未知谷)、評論に『ライトノベルから見た少女/少年小説史』(笠間書院)など。

(告知ページより引用)

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【文責:山中】


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