アメリカのヤングアダルト小説(2)

前回の紹介では『僕とアールと死んでいく女の子』の紹介が長くなってしまいました。今回は、各作品をもうちょっと簡単に紹介しておきたいと思います。

アメリカの書店や国際線ターミナルの英語書籍のコーナーでよく見かけたのが、”The DUFF: Designated Ugly Fat Friend”(Kody Keplinger, Little, Brown and Company, 2010)でした。前回の『死んでいく女の子』と同様に映画化されていますが(映画の公開に合わせて書店に並んでいたのでしょうが)、直訳すると「指定された醜い太った友達」で何のことかよく分かりません。どうも、「男の子たちが注目するイケてる女の子の周辺に居て、ぱっとしない風貌で引き立て役になっていて、本命の女の子にアクセスするためにとりあえず声をかける程度の女の子」ぐらいの意味らしい。「ブス枠」みたいなニュアンスが一番近いんじゃないかと思います。

DUFF

主人公のビアンカは17歳の高校生で、ある日フットボール部員のウィーズリーから「君はDUFF:ブス枠だと、失礼極まりない指摘をされるところから話は始まります。実際、彼女がいつも一緒にいる二人の友人ケイシーとジェシカは、とりわけイケて(hotで)いて男の子たちに人気なのに、ビアンカは頭はいいけどノリが悪くてぱっとしない。二人がダンスフロアーの中央でお尻を振って踊っているのを、バーカウンターから醒めた目で見ているばかり。

で、ここまで読んで、後はネットのブックレビューからの情報なんですが、自分のプライドを保ちながら好きな男に振り向いてもらえるためにはどうすればよいのかを巡って、ビアンカが汲々とするラブコメディ。「ブス枠」呼ばわりされて最初は憎んでいた「女ったらし」のウィズリーとも最後は恋仲になるという、まあラブコメの王道の展開でもあるらしい。

作者は17歳の時に(つまり主人公の設定年齢で)この小説を書き、それもこの本の評価を高めたようですし、今のティーンエイジャーの心境を正直に表現した作品として認められたようです。Fuckだとかの「汚い」言葉も結構主人公の口から出てくるし、文章もかなり口語的にくだけています。レビューの中には「リベラルな人にはお勧めするが、保守的な人にはセクシャルな内容も含まれているのでお勧めしない」ともありました。私は本文の中から探し出せていませんけれども、オーラルセックスのシーンもあるらしいです。17歳の女子高生が、同年の女の子を主人公にした小説を書いてそのまま出版デビューするというと、古い人間はフランスのフランソワーズ・サガンなんて人を思い出してしまいますし、日本でも時々17歳で注目を集める女性作家は出てくるし(堀田あけみ、綿矢りさなど)、ケータイ小説の作家にも17歳は居そうだし、こういう作家はアメリカでも出てくるんだなあと思った次第です。著者紹介の写真を見たら、確かに太っていたので、主人公に自分を強く投影したんだろうなということは推測できました。 DUFF author

次に紹介するのが”I am Princess X”(Cherie Priest, Arthur A. Levine Books, 2015)「私はプリンセスX」。これが目立った置き方になっていたのは、多分出たばかりの書籍だったからでしょうが、私の興味を引いたのは、その表紙でした。バスケットボール・シューズを履いて日本刀を構えた「プリンセスX」がファンシーすぎたからでしょう。

PrincessX

小学校5年生の時にリビーとメイは「プリンセスX」というキャラクターとマンガを合作します。しかし、数年後リビーと母親は車ごと橋から川に落ち、母親の遺体は発見されるものの、リビーのは見つからず終いでした。さらに数年後、メイは街角でプリンセスXのステッカーを見つけます。それは、紛れもなくメイとリビーが作り上げたキャラクターに間違いなく、メイはその後も同じようなステッカーを続々と見つけていきます。それらのステッカーから、メイはiamprincessX.comというインターネットサイトを知り、そこに掲載されていた「私はプリンセスX」というウエッブ・コミックを読み始めます。

そのコミックは、プリンセスXが母親と一緒に車で川に落ち、「針男」によって助けられるものの監禁されること、そして母親の霊に導かれて針男の家から脱出し、冒険の旅を続けているという内容でした。「私はプリンセスX」の作者は謎に包まれていたために、メイは大学生ハッカーに協力を依頼。コミックの中に書かれている鍵を頼りに、作者の正体を探ろうとする、、、というのが粗筋です。

文章は極めて読みやすく、スラングは見当たりません。大きな特徴は「私はプリンセスX」のコミックがそのまま挿入されており、小説とコミックのハイブリッド作品になっていることでしょう。日本刀を構えたプリンセスという出で立ちが、いかにも「戦闘美少女」なので日本のポップカルチャーの影響を疑いたくなるところですが、作品全体から見ると「瑣末な趣向」程度のもののようです。
PrincessXcomic

 

もうひとつ、ジャケ買いしてしまったのが”Spirit’s Prinsess”(Esther Friesner, Bluefire, 2012)『魂のプリンセス』。AKBの渡辺麻友に似てなくもない東洋系の女の子が和服で走っているので「何だ?」と思ったのですが、3世紀の日本を舞台にした「ヒミコ」という名のプリンセスの冒険小説。 SpiritsPrincess

ロシアの方向に韓国があるという極めて大雑把な日本地図が掲げられていて、この頃の日本には長野県あたりに「シカ族」がいて、岐阜県南部あたりに「マツ族」がいて岐阜県北部あたりに「オオカミ族」がいて金沢あたりに「トドマツ族」がいたことになっています。

SpiritsPrincessMap

まあ、一時期アメリカのSFに現れた「勘違いジャポニズム」作品などから比べれば、微笑ましい部類に属するのではないでしょうか。続編も出ていますが、『神話のプリンセス』というシリーズもののひとつで、他は古代ギリシャだとかエジプトが舞台になっていました。この種のファンタジー小説は結構たくさんの本が出ているようです。

Twoboykissing

もうひとつのジャケ買いは”Two Boys Kissing”(David Levithan, Ember, 2013)『二人の少年がキスしてる』。もう、タイトルそのまんまの表紙。ひょっとしてBLだろうかと思って買ってみたのですが、そうではなくてゲイの少年たちの群像小説。あえて言うならGLBT(性的マイノリティ)小説というところでしょう。ダイバーシティ(多様性)を標榜するアメリカらしいといえば、らしいジャンルです。様々な立場のゲイの少年たちを描いているのですが、その中に出てくる「キスの世界最長記録をゲイのカップルから出そう」と励んでいるクレイグとハリーという偽装カップルの話がタイトルになったようです。

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