ラノベ史探訪(17)-〈古典部〉シリーズ:キャラクターデザインの話

現在も絶賛放送中のTVアニメ『氷菓』(制作:京都アニメーション)ですが、早いところでは「愚者のエンドロール」編のクライマックス放送が迫っていますね。果たしてどのような結末を迎えるのか、気になっている視聴者も多いことと思います。

さて、今回はそんな「愚者のエンドロール」に関連する話題を取り上げてみます。ご存知のように、そもそもこの話の元になっているのは原作2巻に当たる『愚者のエンドロール』です。アニメ放送を期に原作を読まれた方もいらっしゃるでしょう。

 『愚者のエンドロール』(角川文庫)

上の写真は現在書店に並んでいるであろう『愚者のエンドロール』ですが、おそらく現在はアニメ化に合わせた特製カバーが付いた版(カバーを取れば上の写真の表紙)を見かける機会の方が多いかもしれませんね。

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ところで以前のエントリー(ラノベ史探訪(14)-『氷菓』とスニーカー・ミステリ倶楽部と)でも紹介させて頂いたのですが、「〈古典部〉シリーズ」のうち『氷菓』と『愚者のエンドロール』の2作までは、角川スニーカー文庫の「スニーカー・ミステリ倶楽部」で刊行されていました(後に角川文庫で再出版)。この2作については、現在書店に並んでいる角川文庫版とは装丁が大きく異なります。

(『氷菓』 角川スニーカー文庫 2001年)

(『愚者のエンドロール』 角川スニーカー文庫 2002年)

そして上の写真からも分かるように、スニーカー・ミステリ倶楽部版でも表紙イラストが2作で異なっています。『氷菓』のカバーイラストは上杉久代氏、『愚者のエンドロール』のカバーイラストは橋本紡『リバーズ・エンド』(電撃文庫)や桜庭一樹『推定少女』(ファミ通文庫)も手掛けている高野音彦氏が担当( カバーデザインはいずれも岩郷重力+WONDER WORK)。絵柄のせいもありますが、キャラクターデザインについて言えば『愚者のエンドロール』の方が(アニメ・マンガ的なキャラクターとして)より明確になってきています。なお、実際に現物を確認すると、『氷菓』では表紙と中表紙で同じ画像が使われていましたが、『愚者のエンドロール』では中表紙で〈古典部〉メンバー全員の姿が描かれた別の画像が使われており、原作でのキャラクターデザインがどのようなものであったかを知ることが出来ます。

『愚者のエンドロール』の中表紙

ここで試しにTVアニメ版のキャラクターデザインと比較してみましょう。

TVアニメ『氷菓』の告知用チラシより

TVアニメ『氷菓』の告知用チラシより

折木奉太郎の髪型などなど、各々のキャラクターデザインは微妙に異なっているのですが、個人的には「えるたそ」こと千反田えるは特に差があるように見受けられます。原作版では清楚で大人しめな女の子という印象が強く、TVアニメ版では原作版よりも活発でお茶目な印象を受けます。「あれ?なんか方向性がちがうんじゃないの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんので、この点については原作に見られる千反田の人物描写を引き合いに出しながら少し考えてみましょう。

そいつは教室の窓際にいて、こっちを見ていた。そこにいたのは女だった。
俺はこの時まで、楚々とか清楚とかいった語彙のイメージがどうもつかめないでいたが、その女を形容するのには楚々とか清楚と言えば形容できることはすぐにわかった。黒髪が肩まで伸びていて、セーラー服がよく似合っていた。背は女にしては高い方で、たぶん里志よりも高いだろうと思われた。女で高校生なのだから女子高生だが、くちびるの薄さや頼りない線の細さに、俺はむしろ女学生という古風な肩書を与えたいような気になる。だがそれら全体の印象から離れて瞳が大きく、それだけが清楚から離れて活発な印象を残していた。(『氷菓』より引用)

「楚々で清楚」な「女学生」でありながら瞳の大きさゆえに「活発」に見える…方向性が異なる2つの特徴を持ち合わせているのが千反田というキャラクターです(少なくとも初登場時点では)。このことを念頭に再度キャラクターデザインを見てみると、原作版では「楚々で清楚」という点を、TVアニメ版では「活発」という点を意識したデザインがなされているように見受けられます。TVアニメ版に慣れていると違和感を覚えるかもしれませんが、原作版は原作版で千反田の特徴の一面を捉えていると言えます。惜しむらくは原作版の場合、上の写真以外にキャラクターが描かれているものがないということですね~。他にもあればもっと考えられることも多かったと思うのですが。

【追記】
Twitter経由でSSMGの人の日記のmegyumi様より情報を頂きました。「惜しむらくは原作版の場合、上の写真以外にキャラクターが描かれているものがない」という点について、「ザ・スニーカー」掲載の「影法師は独白する」=「心当たりのあるものは」には高野音彦氏のイラストが付いているそうです。私も今度確認してみたいと思います。

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【文責:山中】

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