海外ライトノベル翻訳事情 アメリカ編再び(2)

前回は大手出版系の二社の比較を行いましたが、今回は独立出版系の会社であるVizMedia,TokyoPop,SevenSeesの3社について考えてみたいと思います。とはいえ、詳細な議論は無理なんじゃないかと思うのです。

 独立系出版社から出ているライトノベル

出版というのは、机ひとつと印刷所に払うお金さえあれば最低限のことが出来ます。参入障壁が極めて低いビジネスで、だからこそ無一文に近い状態の日本人ヒッピーだってアメリカでVitzMediaみたいな会社を興すことが出来たのです。もちろん、スタッフを雇って、調査を行い、高い原稿料で執筆依頼を行う等、お金の掛けようはいくらでもありますし、大手出版社は様々な思惑で資本投下を行います。これに対して、零細〜中小出版社は安価に出来る戦略を取らざるを得ません。

以前、研究会でライトノベル翻訳事情を話したとき、メンバーから「翻訳しているのは学生バイトでしょ?」という指摘が飛んできました。確かに、そんな気はします。こういうのも何ですが、『スレイヤーズ』など、いい加減な箇所が目立つ意訳でしたし、『ロケットガール』もややこしいところはすっ飛ばした所のある翻訳でした。

日本だって、アメリカのSF小説翻訳を学生バイトに頼っていた時代があります。大学のSF研究会に声をかけて、原語でSFを読んでいる学生に翻訳を持ちかける等ということを早川書房はやっていましたし、後発のサンリオSF文庫も学生翻訳に依存していました。(私の同級生にも動員された男がいました。)当然、翻訳の質は大して高く無い、というか「かなり酷かった」という評価が当時はつきまとっていました。

それと似たような話なのでしょう。日本マンガの翻訳出版が始まったときにも、海賊翻訳をやっていたようなファンが抜擢されたのでしょうが、首を傾げたくなるような翻訳例はいくらでも出てきます。以下は、『のだめカンタービレ』の2005年に出た翻訳ですが、「Aikonしましょう」というセリフが出てきます。いったい、Aikonとはなんなのでしょうか?原文を見れば分かりますが「合コン」なのです。

『のだめカンタービレ』での”Aicon” 『のだめカンタービレ』Aicon原文

訳者自身に日本での生活体験があれば、まず起こらない誤訳でしょうし、日本人校正者を一人入れておけば防げた話でしょう。大手系列のDel&Rayでさえ、こんな誤訳を出してしまうのですから、中小出版社が出すライトノベル翻訳を論じる場合、あんまり細かいことを論じても仕方ないような気がします。そもそもビジネス自体が、担当者の思いつきで発行して、「売れればラッキー、売れなければそれまで」みたいな姿勢で行われている感は否めないのです。

独立系三社のライトノベル翻訳を見た場合、総じてシリーズの翻訳に成功した事例が少ないこと、初期には表紙のイラストは差し替えられるケースが多く、カラー口絵やイラスト、著者後書きを欠く事例が散見されるけれども、徐々に日本オリジナルの体裁を踏襲するケースが多くなっていること、その程度のことが言えるぐらいだと思います。

(報告:太田)

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海外ライトノベル翻訳事情 アメリカ編再び(2) への1件のフィードバック

  1. 通りすがり。 より:

    私が所有している版では
    ちゃんと「gokon」となってますね。
    改訂されているようです。
    そういえば登場人物の一人であるハリセン先生は
    私が持っている前半では「puffer fish」と訳されており
    後半では「harisen」になっていたので、
    途中で誤訳に気付いたのかと思っていましたが
    単に改訂されただけだったのかもしれません。
    ちなみに残念ながらノダメは16巻で出版が止まっており、
    最終巻まで出版されることはなさそうです。既刊も既に絶版です。
    また、同様に「さよなら絶望先生」も14巻から結構期間が開いており
    もしかしたらこちらも絶版かもしれません。
    ともにDel&Rayですが、海外翻訳版では途中で止めちゃう例も
    多くはなさそうです。
    ライトノベルも、ものによっては途中で絶版となり続編が出ない、と言う可能性も十分にありえますね。

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