ライトノベル海外翻訳事情 中国本土編(1)

さて、いよいよ最後の大物、中国本土編です。

台湾編同様にここでも百元籠羊老師に御教示いただき、まずは「現物入手」に挑みました。広い国土で流通も複雑なようですし、本土で使われる簡体漢字の入力に難航してしまい、韓国・台湾ほどには戦績は上がっていません。それでも何冊かは手に取ることができました。以下の表は、韓国や台湾編で用いた作品リストの中から中国本土で翻訳出版されたものを私が探し出せた範囲で並べています。(香港は除外していますが、おおむね洲立角川という会社が台湾角川からライセンスを受けて出版しているという感じでした。)今回は日本語タイトルを入れていませんが、漢字からおおよその推定はつくと思います。ただ、日本の表示環境によっては表示がうまくいかない簡体漢字も結構あって、それらは文字化けするかもしれませんが、どんなものでしょうか?

表:中国本土で翻訳されたライトノベル
凉宫春日(谷川流)上海訳文、上海世纪出版
奇诺之旅(时雨泽惠一)湖南美术出版社、广州天闻角川动漫
狼与香辛料(支仓冻砂)南海出版公司、新经典文库
灼眼的夏娜(高桥弥七郎)湖南美术出版社、广州天闻角川动漫
Tiger x Dragon!龙与虎(竹宫悠由子)湖南美术出版社、广州天闻角川动漫
文学少女(野村美月)人民文学出版社、青春文庫
魔法的禁书目录(镰池和马)湖南美术出版社、广州天闻角川动漫
仰望半月的夜空(桥本纺)湖南美术出版社、广州天闻角川动漫
笨蛋、测验、召唤兽(井上坚二)湖南美术出版社、广州天闻角川动漫
黄昏色的咏使(细音启)湖南美术出版社、广州天闻角川动漫
无头骑士异闻录(成田良悟)湖南美术出版社、广州天闻角川动漫
刀剑神域(川原砾)湖南美术出版社、广州天闻角川动漫

この表で見る限り大手は天聞角川(広州天聞角川動漫)です。中日韓ひっくるめて東アジア世界のライトノベルは角川グループによる独占状態なんじゃないかと思えてしまいますね。ただ、今回の調査はあくまでも「日本で評判の高かったライトノベル」で調べていますので、実際に中国本土でどのようなライトノベルに人気があるのかを押さえておかないと、断定めいたことは言えません。

書籍の体裁は総じて台湾のものとあまり変わりません。繁体漢字(日本で言う旧字体に近い)が簡体漢字になり、縦書き左開きが横書き右開きになったという程度の違いしか私には分かりませんでした。『无头骑士异闻录:デュララ!』の本文のデザインでイラストが配置されていますが、これも台湾版からのものを引き継いでいます。中国語が読める人がきちんと見れば、差異も見えて来るのかもしれませんが、私の能力を超えています。

出版社とレーベルについてですが、中国本土の場合「品牌(ブランド)」がレーベルに該当する模様です。上記リストでは広州天聞角川動漫がこの「品牌」に相当しており、実際に出版を行っているのが湖南美術出版というパターンばかりでした。角川は「広州天聞角川動漫」というブランドを湖南美術出版にライセンス供与しているということです。

『涼宮ハルヒ』については、『憂鬱』(写真左)からずっと出版社は上海訳文でしたが、『驚愕』(写真右)の時に例の「世界同時発売」時に戦略商品と位置づけられたのでしょうか、湖南美術出版+広州天聞角川動漫に変更されています。

今回、手に入れることができた人民文学(青春文庫)、南海出版(新経典文庫)についても、書籍の体裁は台湾のものとほとんど変わりませんでした。

それから、西尾維新の『戯言』シリーズを簡体版でどうしても見つけ出せなかったのですが、同じ作者の『刀語』『物語』シリーズは結構見つかりました。アニメ化されているかいないかが、影響しているのかもしれません。

(報告 太田)

3 Responses to ライトノベル海外翻訳事情 中国本土編(1)

  1. 中国大陸でのラノベ事情、ということで矢も楯もたまらずコメントさせて頂きます。書店流通していないものがあるうえ、正式版か海賊版か判別付かないものが多数あるというのが、何が刊行されているか、の調査における悩みの種ですね。
    手元にないため新しい写真を追加できないのがアレですが、版権許諾の記述がないものの装幀が豪華すぎるので本物ではないのか、といわれた西尾維新の『新本格魔法少女りすか』簡体字版の過去撮った写真をご紹介させて頂きます。http://twitpic.com/7w9ncs
    十中八九海賊版ですが、角川以外のラノベとして『まよチキ!』が刊行されていたのを確認したことがあります。(今は角川グループですが、確認当時は角川グループじゃなかったのです……)

  2. lnovelblog より:

    名無しのオプ@中国留学中 様

    貴重なコメントをありがとうございます。
    お知らせいただいた画像、確かに海賊版とは思えない装丁です。
    これが本当に海賊版だとしたら、感心してしまいます…。

    情報ありがとうございました。

    【文責:山口】

  3. lnovelblog より:

    記事を書いた太田です。『りすか』の書影および情報ありがとうございます。訳文だけならインターネットで読めてしまいますから、海賊版業者も付加価値を付けて売ろうとするのでしょうね。
    中国本土編はまだ続きますので、今後もコメントをお願いします。たとえ海賊版でも、もし書誌情報(出版社、出版年度、出版都市/購入地)などあれば、大変助かります。
    (太田)

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