ライトノベル海外翻訳事情 韓国編(2)

前回( https://societyforlightnovel.wordpress.com/2012/03/10/ライトノベル翻訳事情 韓国編/ )は、韓国から直輸入したライトノベルを手に取り、ジョンさんから送って頂いたソウルの書店のライトノベル売場の写真を見ながら「日本とまったく同じだ~」と感心して終わったのですが、手に入れた韓国版ライトノベルをよくよく見ると、レーベルが著しく偏っていました。そこで、「韓国で出版されているライトノベル・レーベル」という観点で、今一度ハングル文字と格闘してみました。

(前回も出しましたが、NT Novelの例として『涼宮ハルヒ』を再掲しておきます。)

偏っていたレーベルと言うのが、NT Novelで、出版は大元(デウォン)C.I.社。元々、角川書店のアニメ雑誌『ニュータイプ』の韓国語版を出していた会社で、NTはNew Typeから来ているそうです。Wikipediaの情報を信じるならば、韓国へのライトノベル翻訳はこの会社が2002年に始めたということになっており、現在も市場をリードする存在のようです。実際に、2004~2008年および、2011年の日本におけるベストランキング作品がどのレーベルで翻訳されたかを示したのが表1と表2ですが、見事にNT Novelの一人勝ち状態に見える。(実際に韓国で売れている作品をどのレーベルが押さえているかは、また別の問題ですので要注意なのですが。)

表1.2003下期−2008上期

1.涼宮ハルヒ(スニーカー)->大元C.I. NT Novel
2.キノの旅(電撃文庫)->大元C.I. NT Novel
3.フルメタル・パニック!(富士見ファンタジア文庫)->大元C.I. NT Novel
4.「戯言」シリーズ(講談社ノベルズ)->鶴山文化社  レーベル不明
5.狼と香辛料(電撃文庫)->鶴山文化社 Exstream Novel
6.灼眼のシャナ(電撃文庫)->大元C.I. NT Novel
7.とらドラ!(電撃文庫)->鶴山文化社 Exstream Novel
8.文学少女(ファミ通文庫)->鶴山文化社 Exstream Novel
9.空ノ鐘の響く惑星で(電撃文庫)->大元C.I. NT Novel
10.終わりのクロニクル(電撃文庫)->大元C.I.  NT Novel
11.とある魔術の禁書目録(電撃文庫)->大元C.I. NT Novel
12.半分の月がのぼる空(電撃文庫)->鶴山文化社 Exstream Novel
13.バッカーノ(電撃文庫)->大元C.I. NT Novel
14.ゼロの使い魔(MF文庫J)->ソウル文化社 J Novel
15.されど罪人は竜と踊る(スニーカー)->大元C.I. NT Novel
16.バカとテストと召喚獣(ファミ通文庫)->大元C.I. NT Novel
17.黄昏色の詠使い(富士見ファンタジア文庫)->大元C.I. NT Novel
18.ムシウタ(スニーカー)->鶴山文化社 Exstream Novel
19.BLACK BLOOD BROTHERS(富士見ファンタジア文庫)->大元C.I. NT Novel
20.七姫物語(電撃文庫)->鶴山文化社 Exstream Novel
21.嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(電撃文庫)->鶴山文化社 Exstream Novel
22.悪魔のミカタ(電撃文庫)->大元C.I. NT Novel
23.デュラララ!!(電撃文庫)->大元C.I. NT Novel
24.マリア様がみてる(コバルト文庫)->ソウル文化社 Wink Novel
25.ウィザーズ・ブレイン(電撃文庫)->未翻訳
26.砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない(富士見ミステリー文庫)->大元C.I. 一般文芸?
27.GOSICK(富士見ミステリー文庫)->大元C.I. NT Novel
28.流血女神伝(コバルト文庫)->鶴山文化社 May Queen Novel?
29.人類は衰退しました(ガガガ文庫)->ソウル文化社 J Novel
30.銀盤カレイドスコープ(スーパーダッシュ文庫)->鶴山文化社 Exstream Novel

 表2.2010下期〜2011上期

1.ソードアート・オンライン(電撃文庫)->ソウル文化社 J Novel
2.とある魔術の禁書目録(電撃文庫)->大元C.I. NT Novel
3.ベン・トー(スーパーダッシュ)->鶴山文化社 Exstream Novel
4.円環少女(スニーカー)->デウォンC.I. NT Novel
5.バカとテストと召喚獣(ファミ通文庫)->大元C.I. NT Novel
6.僕は友達が少ない(MF文庫J)->鶴山文化社 Exstream Novel
7.丘ルトロジック(スニーカー)->不明
8.涼宮ハルヒ(驚愕)(スニーカー)->大元C.I. NT Novel
9.アイドライジング(電撃文庫)->不明
10.雨の日のアイリス(電撃文庫)->不明

元々、日本のライトノベル出版は角川系出版社のレーベルで大半を押さえられているという状態ですから(ご存知の方も多かろうとは思いますが念のために記しておけば、電撃のメディアワークスも、富士見も、ファミ通のエンターブレインも、MF文庫Jのメディアファクトリーも角川ホールディングス傘下ですし、スニーカーはもちろん角川ですから)、角川のアニメ雑誌翻訳で成功し、ライトノベルの韓国市場導入に成功した大元C.I.社が、角川系ライトノベルで韓国市場を席巻していたとしても、不思議はありません。ただ、表を見ればお分かりのように、角川系ライトノベルの全てをNT Novelが出しているという訳でもない。例えば、日本では電撃文庫で出た『狼と香辛料』は次に紹介する鶴山文化社のExtreme Novelというレーベルから出ています。

(鶴山文化のExtreme Novelの例として『文学少女』、そのレーベル外で出された『戯言』)

そこで、業界二番手と思われるExtreme Novelレーベルを運営する鶴山文化(ハサンモンハヮ)の話に移ります。1995年に出来たマンガ出版社で「Chance」という少年マンガ雑誌を出しています。Extreme Novel は『狼と香辛料』『とらドラ!』『文学少女』など、日本で評価の高い作品を結構押さえていて、前回に紹介した中の『半分の月がのぼる空』もその一つでした。鶴山文化はこの他にもMay Queen Novelという少女小説レーベルで、『流血女神伝』などを出していますし、講談社の雑誌『ファウスト』を出していた関係からファウストノベルズというレーベルもあります。日本の「ファウスト系」作品は概ね、このレーベルで出されている模様ですが、出版が早かった西尾維新の『戯言』シリーズには、このレーベル名は冠されていませんでした。

Extreme Novelも、NT Novel同様に日本のライトノベルのフォーマットをかなり忠実に再現しています。表紙も、カラー口絵もマンガのイラストも後書きもすべてオリジナルを踏襲しているのです。ただし、日本において頑強に独自フォーマットに拘ってライトノベルの本流から一線を画していた講談社は、(アメリカでDelRey社に強いたのと同様に)ここでも独自路線を鶴山文化に強いたようで、Extreme Novelとは別のレーベルを起こさせて、日本でのスタイルを守らせています。

(ソウル文化社J Novelの例として『ゼロの使い魔』とWink Novelの例として『マリア様がみてる』)

韓国の出版社でもう一社紹介しておきたいのが、ソウル文化社。これも、やはりマンガの出版社で、週刊少年マンガ誌「Jump」、少女マンガ誌「Wink」を出しています。ネットで見たところ、『BLEACH』『名探偵コナン』の翻訳が掲載されていますので、アメリカでの「Jump」と同様に集英社/小学館の一ツ橋系列とみてよいのかもしれません。日本で集英社コバルト文庫から出た『マリア様がみてる』は、Wink Novelというレーベルから出されており、『ゼロの使い魔』『人類は衰退しました』はJ Novelというレーベルから出されていました。JはJumpから来ているのでしょうね。

J Novelも手に入れて見ましたが、これまた日本フォーマットそのままです。表1や2をみるかぎり、NTとExtremeとJの3レーベルで殆どの作品が網羅されていますので、これらのレーベルが日本のライトノベルのフォーマットに従っている以上、「韓国でのライトノベル翻訳は日本のスタイルをそのまま持ち込んで出版している」と言ってよいでしょう。そして「講談社はその本流に従わず、独自路線を貫いている」ということも言えると思います。

韓国では、翻訳ではないオリジナルのライトノベルも書かれるようになっているそうですが、今回の調査の主旨からは外れますので、そこには突っ込みませんでした。

(報告:太田)

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