ラノベ史探訪(11)-続・新刊に挟まっている「アレ」の話【前編】

ラノベ史探訪(8)-新刊に挟まっている「アレ」の話」では、ライトノベルの新刊につきものな新刊案内の小冊子を話題にしましたが、今回はその続編となります。本当は「ラノベ史探訪(8)」の方で紹介しておきたかったのですが、「電撃の缶詰」を追うだけで力尽きてしまいまして…続編という形をとって再度取り上げることになった次第です。内容としては「電撃の缶詰」の時と同じく、角川スニーカー文庫(以下、スニーカー文庫)が発行する新刊案内について見ていきたいと思います。

(スニーカー文庫の新刊案内「ザッツすにすに」)

とはいっても、今回取り上げるのは上のような最近の新刊案内ではありません。どちらかといえばスニーカー文庫がスタートした当初の、1980年代末~90年代初頭のものにスポットを当てます。なぜわざわざこの時期のものを取り上げるのか?それは、この時期のスニーカー文庫を調べてみると、はさまれている新刊案内が結構多彩だったからです。例えばそう…「スニーカー文庫の新刊なのに角川文庫の新刊案内が入っている」…とかですね。

現在スニーカー文庫は角川文庫とは別の新刊案内を発行しているので、このような事例は作品を一般文庫化でもしない限りほとんど見られないでしょう。これについては、以前紹介したスニーカー文庫の成立過程が少なからず関係していると思われます。再度確認すると、もともとスニーカー文庫は角川文庫・青帯という名称でスタートしており、後に公募によって現在の名称になりました。

≪参考≫
ラノベ史探訪(1)-「スニーカー文庫」:名称の公募から決定まで【前編】
ラノベ史探訪(2)-「スニーカー文庫」:名称の公募から決定まで【後編】

そんな成立過程を経たためなのか、スタート当初のスニーカー文庫に見られた新刊帯や新刊案内には、「スニーカー文庫=角川文庫の一ジャンル」と見なせるような表記が残っています。例えば松枝蔵人氏の『パンゲア』(スニーカー文庫版)1~4巻の初版帯を確認してみましょう。

(松枝蔵人『パンゲア』1~4巻(初版))

どの巻も表紙上に「SNEAKER BUNKO」のロゴが見られ、確かにスニーカー文庫の作品であると分かります。しかし、1巻には角川文庫が展開した「’89 新青春&ファンタジーフェア」の帯が付いており、どこにもスニーカー文庫の名称が出ていません。2~3巻になると「’91 角川文庫スニーカーフェア」の帯が付き、スニーカーという名称自体は見られるものの、あくまで角川文庫が母体であるような印象を受けます。そして4巻の帯になるとようやくスニーカー文庫の名称が目立つようになり、存在感が増していますね。

(当時の新刊にはさまれていた角川文庫の新刊案内)

そして、当時このような帯が付いていた作品にはさまれていた新刊案内が上のものです。角川文庫の新刊案内と聞いて、文芸書の案内が載っているようなカッチリした作りを想像された方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は違います。「’89 新青春&ファンタジーフェア」や「’91 角川文庫スニーカーフェア」に合わせた作りとなっており、スニーカー文庫の作品がラインナップの中心になっています。

(「’89 新青春&ファンタジーフェア」開催時の新刊案内)

(「’91 角川文庫スニーカーフェア」開催時の新刊案内)

もちろん、当時の作品全てに角川文庫の新刊案内がはさまれていたわけではないようです。どちらかと言えば、上記のようなフェア対象作品に多い事例だったのではないかと思います。1986年から実施したファンタジーフェアの成功以降、角川文庫は継続的に若者向けの新しいフェアを企画していきました。そうした中で角川文庫・青帯はスニーカー文庫へと名称が変わっていくわけですが、角川文庫企画のフェアにとって有力な若者向けレーベルであることに変わりはなく、フェアの作品ラインナップにも依然含まれていくわけです。ゆえに「スニーカー文庫の新刊なのに角川文庫の新刊案内が入っている」といった事例が見られたのでしょう。

≪参考≫
ラノベ史探訪(7)-「角川文庫のファンタジーフェア」とは?

ちなみに後々、スニーカー文庫単独のフェアも開催されており、新刊案内もそれに合わせたものが用意されるようになっています。

(「’93 角川スニーカー文庫フェア」開催時の帯と新刊案内)

さて、もしかすると今回紹介した事例について「当時スニーカー文庫専用の新刊案内がなかったからじゃないの?」と疑問視される方もいらっしゃると思いますが、手持ちの資料で最も古いスニーカー文庫の新刊案内は1989年12月号(実際はさらに古いものがありそう)ですので、別にそういうわけではなかったと思われます。では当時、どのような新刊案内があったのか?それについては続く【後編】で紹介していく予定です。

【文責:山中】

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One Response to ラノベ史探訪(11)-続・新刊に挟まっている「アレ」の話【前編】

  1. […] 前回のコラムの最後にも軽く触れましたが、角川文庫・青帯からスニーカー文庫へと名称が変わって以降、スニーカー文庫にも専用の新刊案内が用意されるようになります。とはいえ、当時の新刊案内は現在のそれとはだいぶ雰囲気が異なりますので、「あれ?何これ?」と思われるものもいくつかありました。そこで今回は、スニーカー文庫の創刊間もない1989年~1991年頃までの新刊案内について、特に興味深いものをいくつかを紹介していきたいと思います。 […]

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