ラノベ史探訪(9)-電撃小説大賞:そこに「面白さ」を求めて

今日(2月10日)は第18回電撃小説大賞受賞作の発売日でしたが、もう購入されましたでしょうか。大賞作である九岡望氏の『エスケヱプ・スピヰド』をはじめとする全5作品を前に、「待ちかねたぜ!」的な勢いで大人買いする方もいれば、じっくり吟味した上で気に入った作品だけを手に取った方もいらっしゃるでしょう。かくいう私も仕事帰りに書店へ駆け込んできました。

(大賞受賞作:九岡望『エスケヱプ・スピヰド』)

(金賞・銀賞・電撃文庫MAGAZINE賞受賞作)

[関連HP:電撃大賞 受賞作品(アスキー・メディアワークス)]

ライトノベルレーベル最大手の電撃文庫が主催する新人賞・電撃小説大賞は、応募総数(第18回では総数5293作品)から見ても、周囲への反響から見ても、他レーベルの新人賞を凌ぐ勢いです。受賞作の発表・発売が決定すればネットを中心に大きな話題を呼びますし、授賞式が新聞記事になるのも電撃小説大賞くらいではないでしょうか(例:「記者ノート 電撃文庫の「新入社員」たち」(「読売新聞」2011年11月29日朝刊)など)。さらに近年では新人賞作品のメディアミックスも積極的に行われており、デビュー作が大ヒット作品へと成長していく例も少なくありません。新人作家を見守る読者にとっては、果たしてどの作品が未来の看板作品となるのか気になるところだと思います。

(2012年4月からアニメ放送が開始される川原礫『アクセル・ワールド』)

ところで、あらためて電撃小説大賞の歴史をふり返ってみると、その第1回が行われたのは1994年のことでした。新人賞の名称も「電撃ゲーム3大賞」のうちのひとつ「電撃ゲーム小説大賞」となっており、現在とは異なります。記念すべき第1回の応募総数は1199作品、受賞作は大賞が土門弘幸氏の『五霊闘士オーキ伝 五霊闘士現臨!』、金賞が高畑京一郎氏の『クリス・クロス 混沌の魔王』、銀賞が中里融司氏の『冒険商人アムラフィ 海神ドラムの秘宝』と坪田亮介氏の『雲ゆきあやし、雨にならんや』でした(参考:第1回 電撃ゲーム3大賞(アスキー・メディアワークス))。そんな第1回の募集が行われたのは1994年1月頃、おそらく関連各誌に告知が出ていたと思われますが、今回は「電撃アドベンチャーズ」を例に内容を確認してみましょう。

(「電撃アドベンチャーズ」創刊号 1994年1月)

「電撃アドベンチャーズ」はファンタジー&RPGマガジンとして創刊されたこともあり、「D&D」や「クリスタニアRPG」の関連記事、グループSNEのメンバーも関わっている仙術バトルRPG「央華封神」の連載など、内容をぱっと見る限りではTRPG誌のような趣があります。しかしよ~く見ると、中村うさぎ氏の「小説・JAJA姫武遊伝」、「小説・魍魎戦記摩陀羅」、ドラゴン殺しをめぐる5つの物語(荒俣宏氏・小沢章友氏・鳥海永行氏・山本弘氏・中村うさぎ氏による連作)といった小説作品の連載も行われており、この点についてWikipedia「電撃アドベンチャーズ」では「メディアワークスのライトノベル雑誌としての位置づけ」があったと記載されています。それをうかがわせるのが、創刊号及び第2号に掲載された電撃ゲーム3大賞の特集記事です。どうやら「電撃アドベンチャーズ」は電撃ゲーム3大賞の主宰雑誌としての性格を持っていたようで、当時のライトノベルとは浅からぬ関係があったと思われます。

(「電撃アドベンチャーズ」創刊号の目次 *赤枠部分が電撃ゲーム3大賞の記事)

(電撃ゲーム3大賞の特集記事(小説賞部分))

なぜかマ○オがいますがひとまず気にしないでおくとして…。電撃ゲーム小説大賞の名称の通り、当初は「ゲームになりそうな小説」が募集対象となっていました。募集要項を見てみると、募集作品の内容は「ジャンルを問わずゲーム感覚あふれた作品(ただし、特定のゲームタイトルを想定したものは不可)」な自由部門と、ファイナルファンタジー(Ⅰ~Ⅴ問わず)をもとにした課題部門の2つに分かれています。課題部門でまさかFFが指定されていたとは驚きです。気になる審査員は、高千穂遥氏(作家)、林海象氏(映画監督)、矢野徹氏(作家)、角川歴彦氏(メディアワークス社長)の4名が務めており、現役バリバリの若手作家が審査に参加するということはなかったようです。なお上の特集記事には角川歴彦氏による、以下のような創設宣言が掲載されています。

ゲームとはコミュニケーションであり、文化であり、そして、何より楽しく面白い。その評価はストレートであるがゆえに嘘がない。ゲーム小説とは知性であり、メディアミックスが実現した時点で総合芸術であり、そしてゲームと同じく楽しく面白い。若く新しい才能がこの生まれたばかりの世界に蜎集して、限り無い可能性を予感させる。どうか、電撃3大賞が豊かな才能の発掘に成功することを―末永く、珠玉の実り多い成果を実現させることを期待しています。

「ゲーム小説とは知性であり、メディアミックスが実現した時点で総合芸術であり、そしてゲームと同じく楽しく面白い」という言葉からも分かるように、当時から(ゲーム)小説作品のメディアミックスに意識的であったことが分かります。また、創設宣言からうかがえる「楽しく面白い」ことを重視する姿勢は、私たちがよく知る現在の電撃文庫にも共通していると思われます。

そして、電撃文庫、メディアワークス文庫編集部は「面白ければなんでもあり」、面白いものをつくる編集部です。それは媒体すらも関係がない。今作って提供する「媒体」が電撃文庫/MW文庫レーベルというだけで、常にドキドキわくわくする作品を送り出すことを考えています!
(アスキー・メディアワークス電撃文庫編集部:三木一馬氏のツイートより)

ひたすらに「面白さ」を求めること。創刊当初からこの姿勢を貫き続けているからこそ、電撃文庫と電撃小説大賞は現在、豊かな才能を生み出す有数のレーベル・新人賞になったのではないでしょうか。今回のコラムを書きながら、そんなことをあらためて考えています。

*謝辞*
今回のコラムで紹介した「電撃アドベンチャーズ」について、榎本秋氏よりコメント経由で貴重な情報を頂きました。あらためて感謝申し上げます。

【文責:山中】

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