ライトノベル翻訳事情アメリカ編(3)

前回までTokyopop社とViz社の出したライトノベル翻訳本を見てきました。日本においてライトノベルは「マンガ・アニメ風の表紙+カラー口絵+挿絵+読者に親近感を抱かせるような後書き」という4点セットが、(例外はあるにせよ)ほぼ守られる出版形態をとりますが、北米マーケットではその前提が崩れています。とはいえ、ライトノベル翻訳に手を出した5社すべてが、日本マンガを扱っている出版社だということからも明らかなように、ライトノベルはアニメとマンガに近いジャンルの小説だという認識もアメリカのマーケットにはありますから、『スレイヤーズ』や『灼眼のシャナ』のようにオリジナルにかなり近い形で、つまりオリジナルの表紙やイラストをそのままの形にして出版される場合もあります。問題はまだまだライトノベルの市場規模が小さくて成功事例もなく、「ライトノベルを売るための最適な出版形態」を出版社が見出せていないということではないでしょうか。

実のところ、アメリカでライトノベルはあまり売れていません。今回の調査では、Amazonや古本の通販サイトを通じて翻訳ライトノベルを買いあさりましたが、市場に数がそれほど出ていない様子は窺えましたし、ほんの数年前に出たものが希少本扱いで高値を呼んでいるのをみて唖然ともしました。これはアメリカにおける「マニア向けコミック」との類似を考えると解り易いのかもしれません。出版社は少部数だけを刷ってコミック専門店に卸し、それをマニアが買い漁って中古市場で高値でやりとりするという、マイナーな出版物というイメージでしょうか。マス・マーケット向け商品として、まだ育っていないのです。

日本製のマンガやアニメが海外市場で売り上げを伸ばし始め、”クール・ジャパン”ブランドが注目されるに従って、日本でそこそこの成功を収めたライトノベルも可能性を秘めた「次のコンテンツ」として扱われるのは当然の成り行きだったのでしょう。Tokyopop社が”MANGA NOVEL”だとか”POP FICTION”だとかのジャンル名ともレーベル名ともつかない言葉を被せたのも、新しいコンテンツへの模索と見る事はできます。ただ、Viz社が2007年に『灼眼のシャナ』をライトノベルそのものの形態で出版したものの続巻が出ず、2010年に出版した『ロケットガール』で「ライトノベルっぽさ」を極力消しているのは「次のコンテンツ」の決め手を見出しかねている証拠のようにも見えます。

ところで、日本での出版形態に極力似せているライトノベル翻訳としては、DelRay社の”Zaregoto”が最先端を行っているように思えます。2008年にTokyopop社が講談社との契約を打ち切られた話は既に書きましたが、その講談社が現在マンガ翻訳事業でメインに取引しているのがDelRay社であり、スターウォーズのコミックシリーズを手がけているアメコミ業界での大手です。TokyopopやVizが日本マンガの出版から始めたベンチャーだったのに対して、アメコミからマンガに手を広げたという点で出自がやや異なる会社。ライトノベルとしては西尾維新の『戯言シリーズ』がこの会社から翻訳出版されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ページの組み方に至るまで完璧に日本版の体裁を踏襲していますが、おそらく講談社が注文をつけたのでしょう。どの程度売れたのかは、よく解りませんが日本での出版形態に忠実に従うという点で極北を行っています。DelRay社は、今後、那須きのこ『空の境界』を出版する予定だとしていますが、アメリカの市場がどれだけ受け入れるのかは未知数です。

(報告:太田)

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