ライトノベル翻訳事情アメリカ編(2)

前回は、Tokyopop社によるアメリカでのライトノベル出版について紹介しましたが、今回紹介するのはViz Media社の出版についてです。

Vizについて知るには、堀淵清治『萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか』(日経BP社)を読むのが一番手っ取り早いのですが、70年代にヒッピーとしてアメリカに渡った日本人が立ち上げた出版社であり、米国における日本マンガの普及に大きな役割を果たしました。特筆するべきは、小学館と集英社と独占契約を結んで『少年ジャンプ』と『少年サンデー』の人気作品をピックアップして一緒にした“Shonen Jump”をアメリカで発行し、さらには”Shojo Beat”という雑誌で、アメリカには従来無かったとされる少女マンガの分野も確立させたことでしょう。小学館と集英社の米国進出の拠点となっている会社でもあります。

マンガ以外ではHaikasoruというレーベルで日本のSFや若年者向け同時代小説を積極的に出版しました。Haikasoruは日米の文化が逆転した世界を描くフィリップ・k・ディックの小説『高い城の男/The Man In The High Castle』の一部をもじったものらしく(ハイ・キャッスル ->はいかそる)、彼らの志が窺われます。出版されたのは、神林長平、山本弘、小川一水、光瀬龍のSF、宮部みゆき、荻原規子のファンタジー、市川拓司『今会いに行きます』、嶽本野ばら『下妻物語』など。

ライトノベルも、このHaikasoruレーベルで出版されましたが、日本での出版形態にはまったく拘らずに普通の小説として出しています。ですから、マンガ風の表紙も、カラー口絵も、イラストも一切ありません。『ロケット・ガール/Rocket Girl』で訳文を比較してみましたが、Tokyopop社のスレイヤーズで見られるような逸脱意訳とは打って変わった真面目で忠実な翻訳で、それどころかライトノベルに良く見られる砕けた語法も大幅に割愛されています。まあ、砕けた感じそのままに訳すのは難しそうですけれど、原作より少し真面目な雰囲気になっています。比較した例も示しましょう。

『九Gに加速。うふふふふっ♥』(ロケットガール)
“And 9G.” Satsuki giggled. (Rocket Girl)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他には『All You Need Is Kill』(桜坂洋)、『スラムオンライン』(同)、『マルドゥック・スクランブル』(冲方丁)、『夏と花火と私の死体』(乙一)、『ZOO』(同)など。SFもしくは実験性の強い作品に偏っているという印象です。

例外として『 灼眼のシャナ/Shakugan No Shana』(高橋弥七郎)があり、これはアニメでの人気に便乗しようとしたのでしょうか、表紙・カラー口絵・挿絵すべてオリジナルのまま(タイトルも英訳されずにローマ字表記の日本語のまま)出版されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(報告:太田)

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